長野県安曇野「豊科近代美術館」は、彫刻芸術が得意じゃない人こそ、最適!文学とのコラボレーション美術館。【体験レポ】

豊科近代美術館

彫像や彫刻をどう鑑賞するのが、よいか分からない。
そんな方は多いのではないだろうか?かく言う私もその一人だ。
安曇野は、禄山美術館もあり、実は彫刻芸術のメッカでもある。だが、彫刻芸術の素晴らしい作品というものはどんなものなのか?説明はおろか、作品例すらおぼつかない。そんな方はぜひ、ここ豊科近代美術館をお勧めしたい。

なぜか?
本館の最も素晴らしい点は、彫刻と絵画と文字の合わせ技だからだ。
本館は、彫刻家、高田博厚画家、宮芳平の二人をメインに据えた美術館だ。
この二人は、彫刻家、画家として優れていただけではなく二人とも文筆家でもあった。多くの言葉や文が本館にも展示されている。
この言葉による補足により、人物と作品は補強され立体的な魅力が生まれている。
この文字や文による補強により、彫像芸術の見方を私は知る事ができた。
そんな楽しみ方が本館にはあるのだ。

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基本情報

収蔵作品:
高田博厚の彫刻作品約200点。
宮芳平の絵画作品約60点。
小林邦のデッサン、スケッチブック等、約170点。
バラ庭園あり(無料開放)

■休館日
・月曜日と祝祭日の翌日
・12月28日~1月4日
■開館時間
・午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
■入館料
・個人:大人500円、大学生・高校生300円
・団体(20名様以上):大人400円、大学生・高校生200円
※入館料は企画によって変わる事がございます。
※入館料の免除について
・中学生以下の方
・安曇野市在住の70歳以上の方
・障害者手帳をお持ちの方と介助者1名

住所:

399-8205 長野県安曇野市豊科5609-3
アクセス:JRの場合
■JR大糸線豊科駅下車、徒歩約10分 タクシー約5分 約900m
・駅前通りを約300m直進、「豊科駅入口」信号を左折、約200m直進「新田」信号を右折、約400m直進、向かって左手に美術館入口。
■JR篠ノ井線田沢駅下車、タクシー約10分 約3.3km
お車の場合(駐車場100台分完備)
■長野自動車道をご利用のお客様
・安曇野(豊科)インターを降りましてすぐの「安曇野(豊科)インター」信号を左折、約1km直進、「寺所(てらどこ)」信号を右折、約300m直進、「寺所北」信号を左折、約500m直進、向かって右手に美術館駐車場。 他
TEL:0263-73-5638

高田博厚は、知る人ぞ知る日本の近代彫刻、現代彫刻の先駆者のひとり

1900年8月19日 石川県鹿島郡矢田郷村(現:石川県岩屋町)生。
1987年6月17日(86歳)神奈川県鎌倉市稲村ガ崎にて没。
著名な実績:
彫刻(文筆、翻訳ほか)
代表作:
『カテドラル』(彫刻)
『アラン』(彫刻)
『ルオー』(デッサン)
経歴:
少年時代から文学・哲学・芸術に目覚め、18歳で上京。
高村光太郎の勧めで彫刻や翻訳に従事。
31歳でフランスに渡り、彫刻家としての創作活動や記者としての活動。ロマン・ロラン(作家)やアラン(哲学者)、ジョルジュ・ルオー(画家)といった知識階層と交流し、カンヌ国際映画祭日本代表を10年にわたり務めるなどフランスでは日本人を代表する存在となる。

高田は、有名な文化人との交流が特徴。モデルと既知の関係であった作品がほとんど

人物彫像を多く手がけているが、その著名人の数にまず驚く。

岩波文庫創設者、岩波茂雄
詩人、   中原中也
詩人、作家 高村光太郎
詩人、作家 宮沢賢治
作家、武者小路実篤、
作家 森鴎外
詩人 ジャンコクトー
画家 ルオー
作家 ロマン・ロラン

そのほとんどの人物と親交があるのがまた驚きだ。
(宮沢賢治だけは、彼の死後に弟に頼まれて彫像を作成した)
そして、この交流が作品の趣き、雰囲気にキチンと現れている。
ある時は角度に、ある時は目元に、それは溢れている。

高田の素晴らしい点は、芸術家としての文人として才覚を発揮しているところだ。
その為、彫像、絵画の隣にはその人とのエピソードや、高田がどんなものを込めてつくったのか。が手記によって添えられている。
この手記が、作品をより立体的かつ奥深くさせている。

Jean_Cocteau1961

ジャン・コクトー、三郷工房HPより

例えば、このジャン・コクトーだ。
この彫像の隣には、こんな短い手記が展示されている。

フランスの派手な社会の中心にいながら彼の感覚が鋭いあまりに、そこに孤独な魂が影をさしているのに私は引かれる。

ジャン・コクトーは、こんな顔だったのか、では決して終わらない深みがある。
この高田本人の手で書かれた手記たちが、より作品をのぞき込む為の窓の役割を担っている。
これらの短い手記は、各作品の隣に添えてあり、作品をより深く楽しませてくれる。

宮芳平は、森鴎外の作中にも「画家M」として出てくる澄んだ感性の画家

1893年、新潟県魚沼市堀之内生まれ。
1971年(88歳)京都にて没。
著名な実績:
画家(文筆ほか)
主な作品:
「カーテンに」
「海のメランコリー」他
経歴:
東京美術学校に入学。「椿」が文展に落選するも、納得いかずその時審査委員長だった森鴎外を直接訪ね、以後知遇を得る。
森鴎外著作「天龍」に画家M君として描かれるなど才能を認められ、将来を嘱望された。
長野県諏訪市に美術教師として赴任、美の教育に努めつつ自然を対象にした主観写実を心がけた。
また、彼は職業画家ではなく、教師をしながら己の感性のみに頼って絵を描いた芸術家でもある。
2014年に生誕120周年を記念し、全国を巡業する回顧展が行われた。
各地で大きな反響を受け、NHK日曜美術館でも特集された。

美術学校の子供の館の為の、個人通信誌「AYUMI」がなかなか読ませる

宮は慕われた高校教師だった。

今でも当時の生徒や生徒の親族などが、とてもいい先生だったと見に来られるような人物だった。

そんな彼が生徒たちと行なっていた心の対話が「AYUMI」である。これがとても素朴で、宮の澄んだ人格を現してくれる。
世が世なら、エッセイとして売り出せばそれなりに売れたのではないかと思う。
残念ながら、個人通信誌の為、この館内以外に見る方法がないのが悲しい。

初期のデビュー作「椿」が秘めたパワーがすごい

椿

椿,1914,NHK日曜美術館HPより

実際は縦幅で2m近くある大作である。
この作品だけの為に来ても過言ではないほどのパワーを秘めている作品だ。
森鴎外をして「非常に惹きつけられる作品だが、これを賞にしてしまうのはどうなのか?と迷った作品」との事。

とはいえ決して拙い作品などではない。

ダークトーンで象徴的な本作は一見して何を書いてあるか分からず、また何をしているところなのかも判別がつきづらい。

それゆえにどれほど眺めても飽きることのない魅力をたたえている。

まとめ

作品展示数も、安曇野で20館以上あるなかで最多に数えられるボリュームである。
しかも彫像、絵画、文筆と複合的に楽しむ事が出来るのが、冒頭でもお話したが、本館の一番のおすすめポイントだ。自分の感性で楽しみつつ、横に添えてある文や手記で作者自らの解説に新鮮な驚きを感じながら観ることが出来る美術館である。

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