バズビー・バークレーのミュージカル映画「THE GANG’S ALL HERE 集まれ!仲間たち」感想・凄さ

※ネタバレ致します

集まれ仲間たち公開ポスター

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基本情報

監督
バスビー・バークレー
脚本
ウォルター・ブロック
撮影
エドワード・クロンジャガー
音楽
アルフレッド・ニューマン
制作国
アメリカ
制作年
1943年
出演者
イーディ・アレンーアリス・フェイ
アンディ・メイソン-ジェームズ・エリソン
アンドリュー・メイソンシスター-ユージン・パレット
ドリータ-カルメン・ミランダ
フィル・ベイカー-フィル・ベイカー
ベニー・グッドマン-ベニー・グッドマン

「あらすじ」
ある夜、軍曹のアンディは婚約者とともにクラブニューヨーカーに訪れた舞台で踊るイーディーに恋をしてしまう。短い逢瀬の中でイーディーもまたアンディに魅了され、ナイトクラブを渡り歩く。二人は恋に落ちるが、翌日アンディは南太平洋の戦地へ旅立ってしまった。アンディは武勲を立て、国よりメダルを授与され帰国する。クラブニューヨーカーの面々と、アンディを歓迎する戦争絆集会を行うことになりイーディーも舞台に立つ事になったが…。

本作は、華やかで超現実的な(ある種サイコ的な)ミュージカルショー。
その舞台裏で客の男とショーガールの二人が恋におち、逢瀬を経ての成就が描かれている。
ストーリーやドラマ自体を語る事は本作においてはほとんど意味をなさない。

本作は、天才振付師バスビー・バークリーが生み出した、ぶっ飛んだショー演出や
斬新的で目をみはる程、華麗で夢想的なミュージカルパートを堪能する
1943年の作品である。
バズビー監督にとって初の本格的なテクニカラー映画であった事も特徴です。

バスビー・バークレーは、1920年代はブロードウェイの舞踊監督、30年代〜50年代世界を一世風靡させたミュージカル映画の名匠だ。
ミュージカル映画というと今年のアカデミー賞を獲得した「LA LA LAND」が思いつく方も多いかもしれないが、バズビー監督が得意としたのはLA LA LANDのようなストーリーの中で動く心中を踊り歌い上げる形式ではない。

純粋なショー(舞台があり、観客席も置かれている)形式が作中に数回出てくる。
30名〜60名前後の大人数におけるマスゲーム的な息を揃えてリズミカルに動く事で立ち現れる1枚の抽象画(バークリーといえば人間万華鏡!)のような俯瞰的な構図を得意とした。
もちろん本作には、ドラマの主役であるイーディー(アリス・フェイ)が自らの心中を歌い上げるようなスコアもあるがそれすらもショー形式での描き方をしている。

また、モチーフの奇抜さや、カメラ位置や動きなどから群像ミュージカルを奇抜に切り取る意外性のあるショットなど。
かつてブロードウェイでの振付経験をもとに、映画映像だからこそ魅せられるショーに特にその情熱を燃やしていた。

さて、前置きはこんなところで私が感じた見所と、こういうのもやって欲しかったなあをそれぞれ書いていく。

The Lady In The Tutti Frutti Hatのショー演出がやり過ぎなくらいの過激&奇抜さ

本作前半に配置された、果実がふんだんに盛られた帽子をつけたカルメン・ミランダのショーである。
一応役柄名はドリータだが、本作に出てくるショーはカルメン・ミランダそのものだ。
このスコアも”ブラジルの爆弾娘”の異名を持つ陽気で派手なサンバやタンゴを歌いこなす映画スターカルメン・ミランダが好んでよく被った帽子の事そのものだ。実際彼女のアイコンであったそうだ。
ちなみにちょっと変わった微笑ましい位の帽子ではなく、風変わりな果実の帽子としか形容できない帽子である。

そしてカルメン・ミランダを囲む、肌をかなり露出した野生的な格好の若い女性50人程度が周りで踊る。
(うわあ刺激的だなあ)など思っているうちはまだ甘い。
その50人は自分の半身ほどもある超巨大バナナを全員両手で持ち上げたり降ろしたりしながらリズミカルなマスゲームを演じている。
こんなショーが夢に出てきたら「俺はそんなに性に飢えているのだろうか」と頭を抱えるレベルの刺激的さである。
巨大バナナのウェーブの中をサーフィンのチューブウェーブの中を駆け抜けるが如くカメラが突き抜けていく。
何よりそこに写される女性達は、皆一様に無邪気な笑顔をたたえている。
カルメン・ミランダは地上の楽園とばかりの歓喜に満ちた笑顔で歌いあげている。
そして決め手は、大量の巨大バナナが空に向かって広がる(逆富士山のような形)背景。
その先っぽでレイディ、ドリータが砂漠の踊り子のようなポーズでしゃなりと立っている。
空を覆う大量の巨大バナナが帽子のような見立てになっているのだ!
我々はこの背景丸ごとを衣装のようにしてしまう演出を知っている。紅白出場時の、小林幸子御大である。

これが戦時中真っ只中にアメリカでは公開されて盛り上がっていたのだから、そりゃ日本なんか負けるわと思わされる。
※ちなみに本作が日本で封切りされたのは戦時中だった事もあり、なんと2010年!

ラストのHE POLKA DOT POLKAのショーの愛らしさと先進的な舞台演出が凄い

またショーかよと思わないでほしい。これだけ映画演出は進化しているというのに色褪せない独特な良さが本作のショー演出にはあるのだ。
ざっくばらんに言ってしまえば頭のネジが1本外れてしまったのようなちょっとヤバい演出が大抵含まれているのが良いところだ。
先に言っておくが貶してはいない。頭のネジが1本外れている。クリエイターに向けるには褒め言葉だ。
水玉模様の少年少女がポルカを踊るのに混じって軽やかに歌うアリス・フェイの演出の愛らしさとお洒落さ。
スコア自体も本作一キャッチーで楽しげだった。

グレーにピンクの水玉の衣装が可愛らしいが、よく見ると少女の帽子には大輪の薔薇がアンコウの光のようにニュッと頭のてっぺんから咲いている。やはり無邪気な笑顔の少女達が異様に眩しい。

その後、暗闇の中電飾を巻いたフラフープを持った全身黒タイツの女性達(またも30人程度が)がマスゲームを始める。
真っ暗な中で交錯し重なり広がりピンクライトの輪が美しい。色付きの噴水も使っていたが、現代でも通用する演出美である。

なんといっても人間万華鏡!

私はバズビー監督作品を初めて観る為、初見だったが(大体彼の作品には出てくるらしい)今でこそ万華鏡のような色彩が溶け合うように変化していくケミカルな演出はミュージックビデオやプロモーションビデオでは常套手段だし決して珍しいものではないが、よく見ると上記の全身タイツ(色とりどり)に丸型を持った女性達が手足を広げたり、丸を仰いだり降ろしたりしているのが分かるのは今見てもかなりぶっ飛んでいる。絵として観れば千変万化する美しい万華鏡のショーだが細部を見ていると、いろいろな事がふとどうでも良いような気持ちになるから不思議である。

そして、人間万華鏡を超える驚愕のラストの演出にてああこの映画はちょっと頭のおかしい映画作品だったんだな。と気づく事になる。

さてここからはこういうのもやって欲しかったなあパートである。たった一つだけだ。

ドラマパートにももう少し情熱を込めて欲しかった

当時のミュージカル作品自体がスコアやショーを楽しむものであり、映画1本としての、ストーリーやドラマを楽しむ作品ではないのは承知しているが、これからどうなっちゃうんだろうというドキドキやすれ違いの切なさも相手を騙す葛藤も本作には特にない。
主演の陸軍軍曹アンディ(ジェームズ・エリソン)とその幼馴染ヴィヴィアン(シーラ・ライアン)とショーガールのイーディの3人の
三角関係にも似た展開がラスト最大の幸せへの枷となるが、ヴィヴィアンの「私、ニューヨークへ行くわ。アンディとの関係?お互い本気じゃないわ、じゃあね」の一言で解消というのはあまりにも寂しい。そうかもしれないけどさ!そこに気づくのにさ!もうちょっとさ!
せめて、イーディーの気持ちの強さに気づいたヴィヴィアンが粋な計らい
アンディと喧嘩などふっかけ、アンディの本当の想いを聞き出して身を引くような終わりにしてほしかった。
と思うが、それよりもショーを沢山かけたかったのだろう。

まとめ

実にパンチのある、心に引っかかる演出を多く備えた作品でした
私はあまりミュージカル映画を観ないが、本作の事は忘れないだろうと思う。

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