映画「カメラを止めるな!」は”映画製作への愛と夢を持ってる人”にこそ見て欲しい

カメラを止めるな!ポスター

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基本情報

2017/日本 上映時間96分
監督・脚本:上田慎一郎
プロデューサー:市橋浩治
撮影:曽根剛
録音:古茂田耕吉
編集:上田慎一郎
助監督:中泉裕矢
特殊造形・メイク:下畑和秀
ヘアメイク:平林純子
制作:吉田幸之助
アソシエイトプロデューサー:児玉健太郎、牟田浩二
出演:濱津隆之、真魚、しゅはまはるみ、長屋和彰、細井学、市原洋、山崎俊太郎、大澤真一郎、竹原芳子、吉田美紀、合田純奈、岩地紗希奈、秋山ゆずき、山口友和、藤村拓矢、高橋恭子、イワゴウサトシ

(あらすじ)
とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画の撮影をしていたが、そこへ本物のゾンビが襲来。ディレクターの日暮は大喜びで撮影を続けるが、撮影隊の面々は次々とゾンビ化していき……。(以上、映画.comより)

※ネタバレします。ご注意ください。

本作は見たら分かりますが、低予算映画なんです。
本作の製作品なんと300万と囁かれております。お金がないと嘆かれる邦画でも映画の制作費は5000万〜1億。(ハリウッドはその100倍位)

お金がない分、知恵と愛とチームワークでやってやろうぜ!

というのが本作。
そして、それを可能にしたのは、プロット(映画全体の構成)です。
すごい!練りに練られている。
前半と後半とさらにEDまで含めるとなんと3重構造の入れこ細工となっています。

ワンカット撮影を巧みに逆手に取った笑わせるネタの嵐

英題「one cut of the dead」の通り、本作のウリは一度もカメラを止めないワンカット撮影で38分のゾンビドラマを撮る!!というものだ。これが何を意味しているのか、観客サイドでは分からないが、これを製作サイドから考えてみたらつまりこういう事なんだよ。っていうのが本作の骨子となっている。

目線を観客から、製作側に反転させることでこんなにも笑いに溢れた作品に進化するとは考えてもいなかった。
というより、結局自分はお客さんで満足させられる側だという固定概念があったのだ。
それを壊して完全にひっくり返してしまった事に本作の最大の素晴らしさがある。

製作サイドの目で見る、こんなにもチームワークで支えられている映画づくり

いつも映画を見終えると始まる長大なEDロールを見てもちろん知ってはいたけれど、
目線を変えさせられ、製作陣のアイデアと努力の数々が実際に目の前でリアルタイムに映画として出来がっていくサマが胸にクる。
スタッフが撮影に写り込まないように生首を画面の外に瞬時に投げ出し、枠の外では生首フライングキャッチしてる現場がなんて眩しいことか。一つのものに向かって皆で全力疾走してる姿が永遠の青春だし、ラストのカタルシスを最高に押し上げてくれる。

絶対カメラを止めないゾンビ映画という分かりやすい目標が、効果バツグン!

作品テーマをどうするかは、うまくいくかの成否を分ける最も大きな要素だ。
本作はそれがバツグンにハマっている!笑いの種を産みまくり、熱い製作チームワークが溢れている。
何しろ、何があっても絶対に終わるまでカメラを止めない!という目標はとにかく分かりやすい!!
「良い映画」のために一致団結となれば、それは個人の価値観が中に混在するし「売れる映画」「残る映画」なんかもそうだ。
それは個人的な見解をまとめる必要がある。それぞれのプロフェッショナルがそれぞれの哲学からなる美学で作る職人作品だろう。

だが、本作の一致団結の要素は違う「絶対にカメラは止めない!」だ。
これはもう皆が皆、ヨシ!となって行える事だろう。

そして更に、ゾンビ映画である事が勢いに拍車をかけている。
ゾンビ映画はパニックホラーだ。それは、常に逃げ惑う人々を描く作品である。
要はずっと走っている作品なのだ。役者が走っているということはもちろん撮影陣も皆走ってるわけだ。
継続性のある二つの要素がとても相性が良く、まるで自分もスタッフかのように没入してしまう。

癖のあるキャラクター陣がハプニングを生む。というコメディの王道

ロイドやチャップリン、ドリフターズなどは設定や展開、テンポに笑いが溢れている。
前述した偉大なコメディに似た笑いがワンカットやゾンビをうまく取り込んだ面白さとしてある。
けれど、本作はそれだけでは飽き足らずキャラクターによるシットコム(アメリカを中心に流行したシュチュエーションコメディ、フレンズやビックバンセオリーなどの海外ドラマが代表)的な要素も存分に組み込んでいる。
主演二人から妻や娘、脇役、プロデューサー、TV局員に至るまで見事に一風変わった眉根をひそめる癖を持ったキャラクターが出揃う。あとは、一人一人その困った要素を伏線にし、笑いに回収していくだけだ。
一体いくつ笑いの種を仕込んでいるのだろう?と思う程、無数に貼られた伏線に見事に笑わせられる羽目になる。見事な脚本だ。

まとめ

既成概念を壊すチャレンジングな手法ながら、それに飽き足らずチャレンジを笑いに変えるアイデア。そのアイデアを実現可能に落とし込むスタッフと役者の綿密さが垣間見えるのがすごい。ここまで舞台裏感全開なのに、見ている分にはただただ楽しいのだ。変に思想を押し付けてこない。想いのこもった言葉は笑いに変えるスマートさを持ち合わせている辺りが、大御所が一人も存在しない低予算作品においてとても稀有だと思う。大抵肩に力が入ってしまうものだが、良い意味で本作は本気で浮かれた作品だ。
それでもクライマックスにたった1シーンだけ、笑いを挟まない熱いシーンが存在する。これは紛れもなく製作陣が映画に夢見た理由、愛を注ぎ続ける理由である。と同時に、僕ら観客に対するリスペクトと感謝でもあるのだ。
だから、僕はこの映画をとても好きだ。そして、劇場を出てみると映画は素晴らしいものだと改めて胸張って思う事が出来るのだ!!

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