ニンフォマニアックvol1.2感想「人は生まれ変われる(笑)」

※思いきりネタバレ致します。

Nymphomaniac公開ポスター

本作をどう評価するかは、全てをぶち壊した最後のラストワンシーンを全てとするか、どうかで見方は随分変わってくると思う。

私は全てとする。何しろオチなんだから!
予測もしていなかったし、綺麗な見方をし直すにはショックが大き過ぎる。
本作とは、詰まるところ、壮大な前振りの先にあるチープなラストに何を感じたか?だ

「3秒あらすじ」
童貞で孤独な男が色情狂いの女をある夜保護して、女の半生を聞く。体の関係に疲れた女に、優しい言葉などをかけながらも男は最後、結局夜這いをかけ女に殺される話。

そういう身も蓋もない喜劇的な悲劇のお話。
私にとってチープなラストの意味はそういう事だ。

結局男セリグマンの行為によって、彼は卑小で欲にまみれた童貞男に過ぎなくなってしまい、それ故に女ジョーは結局ただの色情狂いに過ぎなくなってしまった。高尚さや深刻さがギャグのオチに利用されたのだと感じた。
だが捉え方を変えればこれは挑戦的な作品でもある。
セリグマンは確かにそうだったが、あなたはジョーの半生を見て聞いてみてどう思ったの?
と問われている。ようにも感じる。
彼女は、性の虜だったがどこまでも自由だった。性に囚われる故他の多くの常識から離れた自由さを獲得していた。
社会の中にあってこうでなくてはならない圧力など本作には一度だって出てこないのだ。
奔放かつ赤裸々(こんなに赤裸々が似合う人いない!)にセックスライフを謳歌する女像がそこにあるばかりだ。
後半、「愛」などという厄介なものを覚えてからはその間で葛藤する羽目になるが、それすらやはりごくごく個人的な悩みだろう。
劇中なんども出てくる「私は悪い女なの」という言葉に対していかに感じるか?自分ならどう応えるか?があるいは
本作の肝なのかもしれない。
自身の立場、主観がそこには必ず現れてしまうだろうから。

さてテーマとは別に個人的に良かった点。

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高尚なユーモアに満ちた性欲まみれの下衆ネタが新鮮!

「私の唯一の欠点は、夕陽に人よりも多くのものを求めすぎてしまったことね」という詩的な形容をもって始まる。
東方、西方正教会などを引き合いに出しながら語る性欲が強すぎる話。
釣りやバッハの音律を引き合いに出しながら語るセックスの話。
ユーモアに包めば生々しく下衆い話しも面白く、どこか高尚な行いのようにすら、、思えては来ないがニヒルな笑いは口から漏れ出す。私はここが何より面白かった。

欲望に翻弄され、生まれるめくるめく感情の波が見事に描かれている

彼女は度し難い欲望から端を発し、せん妄、暴力、愛、そして最後に罪を己の欲望に抱く。
欲望自体がここまで鮮やかな気持ちに変化する事自体、本作で初めて知ったが欲望という原初的な生物的欲求からも、人は自覚さえすれば「どんな人間も変わる事が出来るのだ」という感情へシフトするが実に面白い。
現実にジョーのような女がいるかは知らないが、長い物語の中で一貫して欲に振り回され続けるジョーを通じて、人間は結局欲に溺れる種族なんだぞと、トリアー監督は伝えたかったのかもしれない。

喜劇的な悲劇要素が笑える

冒頭と重複しますが、まあここですよ!ラストですよ。
ラース・フォントリアー監督といえばダンサー・イン・ザ・ダーク、ドッグヴィル等、人の浅ましさ、欲深さ、人の持つ不快さをこれでもかと嫌らしく描く中でも灯っている小さな希望や純真さを観衆に見せてくれるエグピュア映画の名匠だ(と勝手に思っている)
ついでに一緒に映画を撮った人は、こぞって「二度と一緒には組みたくない」と言われる変態でもある。

本作もまた周りに彼女と真っ当に付き合う人物は出て来ない。
皆自分自身の、特異な性癖を曝け出し受け止める相手として描いている。
唯一真っ当に接し続けるかのように見えたセリグマンもやはり受け皿として見てしまった。
このたった一つの裏切りの展開によって本作は長い、長い、喜劇的な悲劇として生まれ変わった。
悲劇というのは常に喜劇的な側面を持ってるよね。
本作を観ると思わずそんな事を思ってしまう。

まとめ

人間は欲望にどれだけ振り回される生き物なのかを余す事なく描いた突き抜け過ぎゲスストーリーである。
下衆でシニカルなシーンはどのシーンも面白かったが、個人的にはセリグマンが無理やり挟んでくる薀蓄を非常に楽しかった。
今思うと、自分の得意ジャンルの話に絡めて懸命に気を引こうとしていたのだろうか。
全くひどい話だ笑

ただ一つだけわからないのは、セリグマンは初めからこいつうちに連れ込めばワンチャンあるかもと思って持ち帰ったのか、
話の途中でそうなったのか?そこらへんは示唆されていない。
どうだったのだろうか。。。

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