映画「ミックス」はTVドラマで十分?なぜか?映画とドラマの違いまとめました。

ミックス。ポスター
現在、「獣になれない私たち(通称けもなれ)でも大活躍のガッキーかわいい万歳映画「ミックス」。
「リーガルハイ」の古沢良太を脚本に迎え、全方位主演級キャストをもれなくコメディリリーフさせるという豪華映画です。

映画を観て、最近cakesで公開してる古沢さんの脚本も読んだんですが、どっちも観て、読んでみて、ぶっちゃけて申し上げて映画じゃなくてテレビだよなぁと思いました。

そりゃ監督も制作局もテレビ局の人間ですから、当然といえば当然なんですが…なんでそう思ったのか?

よく聞く「これならテレビの2時間スペシャルで十分」のこれって何なのか?

実はよく分からない。

今回は映画とドラマの違いはなんなのか本作「ミックス」に照らし合わせながらまとめてみました。

スポンサーリンク

基本情報

監督
石川淳一
脚本
古沢良太
出演者
富田 多満子-新垣結衣
萩原久-瑛太
吉岡弥生-広末涼子
江島 晃彦-瀬戸康史
小笠原愛莉-永野芽郁
佐々木 優馬-佐野勇斗
-蒼井優
落合美佳-田中美佐子
落合元信-遠藤憲一
音楽
末廣健一郎
主題歌
SHISHAMO「ほら、笑ってる。(Movie Ver.)」
制作会社
FILM
製作会社
東宝
フジテレビジョン
配給
東宝
公開
2017年10月21日
上映時間
119分

「あらすじ」
母のスパルタ教育により、“天才卓球少女”として生きた多満子。母の死後は卓球を捨て普通に平凡な日々を送っていた。そんな中、会社の卓球部のイケメンエース・江島に告白され付き合うことに。ついにバラ色の人生が!と思った矢先、美人の卓球選手愛莉に江島を寝取られてしまう。逃げるように田舎に戻った多満子は、亡き母が経営していた卓球クラブ再建と打倒江島・愛莉ペアを目標に、全日本卓球選手権の男女混合ダブルス(ミックス)部門への出場を決意。多満子はクラブの新人萩原とミックスを組むものの、全く反りが合わずケンカばかり。しかし、そんな二人の関係にも、やがて変化が訪れていく―。公式HPより抜粋)

映画と、ドラマの違いとはなんなのか?

1.映像で魅せるか、セリフで語るか?

ドラマは、ながら見を考慮する為とにかくセリフで説明する事が多いです。
映像だけでは、何かのタイミングで席を立ったら見逃してしまうからです。

対して、映画は始まったら終わるまで見てもらえますので逆に映像美があります。
息を呑むようなシーンがあればそれはおそらく傑作となり得るわけです。
その1シーン、1ショットの為納得のいくまで撮り直す芸術作品です。
自然、台詞でさらっと伝えてしまうより画で魅せる事を重視する傾向があります。
観客も役者のそういった演技を名演と評価します。

またドラマは制作スケジュールの都合上、何日もかけて一つのショットを追いかける。極端な例では「雲待ち」(今はいい雲が出ていないから待とう)のような事が出来ないという事情もあります。

本作もかなりセリフとモノローグで状況説明、心理描写をしていました。
とても分かりやすいのですが、その分すごいもの(言葉に出来ないもの)を見たという衝撃は少なくなります。

2.分かりやすさ優先の回想シーンがドラマっぽくなっていた!?

本作は回想シーンが多いです。クライマックス前はほぼ回想です。
回想で知られざる過去を明かしてくれたのは良かったのですが、とても分かりやすい回想だった為、こちらで想像する部分が少なかったです。
想像する余地が多い方が映画としては好まれ、少なければテレビとしては好まれます。
これは観客をエンディングまで捕まえておけるかどうかの違いです。
映画では一見して意味が分からないシーンがあっても、最後まで作品を追いかけなければなりません。
後から何かヒントやどんでん返しがあるかも。という見方が出来ます。

しかし、テレビの場合、観客はそのシーンが分からんと思った瞬間チャンネルを変えてしまいます。
もちろん例外は沢山ありますが、ドラマと映画(邦画)では格段にドラマの方が観ていて分かりやすいつくりになっています。

3.ワンシーンをじっくり撮るか、シーンをカットしてポンポン画面を変えていくか

よく邦画では長回し、ロングショット。
という単語が出てきます。

ロングショットとは、被写体とカメラの距離が非常に遠いショットの事。

人物や対象を景色に溶け込ませる事で余韻を産んだり、逆に浮かび上がらせる、他者や第三者の視線から見せるなど様々な効果があります。

少し前の作品ですが、沖田修一監督の「横道世之介」の冒頭世之介の登場シーンなどは見事なロングショットのシーンでした。

長回しとは、カットせずに長い間カメラを回し続ける映画の技法。

カットが安定している為、役者の緊張感や映像の臨場感を維持し続けたり、表情の微妙な演技などを魅せる事が出来ます。

対してドラマでよくあるのは、カット割とアップ。

カット割とは、1つのシーンを細切れの短いシーンに分けて、分かりやすく編集を重ねて一本のシーンや作品にまとめていく事。

スピード感のある映像や、飽きさせない場面展開、細かい演技などにはとても適しているやり方です。
飽きさせない、見やすいという点で、ドラマはカット割が非常に多いです

アップはクローズアップの略です。

クローズアップは、画面いっぱいに一つの対象を大写しにし他の要素を排除さもしくはぼかす技法です。

よく役者の顔アップや、キーとなる小道具のアップなどに使います。

画面の大きさの問題で小さなテレビの画面でロングショットは意図したものが伝わらないおそれがあり避ける傾向があります。
逆に、アップで大画面に顔などは見づらく、違和感があるためあまり多用されません。

ただし、効果的な逆転現象も多々あります。

今週放送されたドラマけもなれ2話で、とても印象的なラブシーンはロングショット気味でしたし、カンヌでパルムドールを獲った「万引き家族」安藤サクラが最も素晴らしかったシーンは顔のクローズアップと長回しの組み合わせシーンでした。

ただ、ミックスがどうだったのか?というと役者へのクローズアップとカット割りが連用されていました。
逆に、役者の表情変化や映像としての美しさで魅せるといった意図のロングショットや長回しはほとんどありませんでした。

ちなみにこれは、本作がコメディ作品かつ卓球(スポーツ)というスピード感が要求される類のものだったからという事もあると思います。
美しい映像でウットリの後で、濃いめなギャグを突っ込まれたら笑う前に冷めてしまいますから。

結果的にはお茶の間で観るドラマのつくりと似た構図になってしまいました。

大根仁監督の「バクマン。」などは、そこらへんを見事に芸術性が高く。かつスピード感を持った映像に仕上げていました。

4.映画は監督の作家性が色濃く出る。テレビドラマはみんなの作品。

私がかつて過去脚本の専門学校に在籍していた折に「映画は監督のもの、テレビドラマは脚本家のもの」と言われたことがあります。

テレビドラマはセットにお金もかけられず、撮影時間も長く取れないため、撮影前から最も時間を割く事が出来る脚本家の役割は他より大きなものとなります。

野沢慎二、向田邦子、クドカン等、有名な脚本家のほとんどがテレビドラマ出身である事からもこれは見て取れます。

ですが、脚本家は監督ではないので最終的にはプロデューサーや監督、製作、役者にお任せする事になります。

対して映画の脚本はほぼほぼ監督が書きます。1から10まで監督の作品だからです。
監督が誰かに委ねるという事はそれ程多くありません。
ちなみに日本には「映画もみんなのもの」になる独自の製作委員会方式というシステムがあり、これはこれで問題視される事もしばしばあります。

すこし、話はそれますがハリウッドを牽引するMCU(アイアンマン等の製作会社)の副社長が日本の原作映画に対してコメントしていた事があります。

「MCUは-ケヴィン・ファイギという一人の男のビジョンで映画が制作されている」

マーベル社副社長が語る「なぜ日本のマンガ実写は失敗するのか?」(togetter)

製作委員会方式とは、参加企業が資金を出し合い、映画・ゲームなどを製作する方式。作品の権利・損益は参加各社で分け合う。出資した放送局・新聞社・出版社・広告代理店などによって大掛かりな宣伝ができる。

映画における強烈な作家性は、1人の作品だからこそ現れるという説です。
昨今良質な作品が多く生まれる韓国映画も現在は作家主義路線です。(下記がソース)

監督が考える「韓国映画らしさ」とは?(Real Sound)

本作の監督、石川淳一氏は職人肌であまり自身の作家性は強くない方のようです。(古沢良太氏と組んだ作品だけしか観てません。すみません、、)

結果的に、テレビ局やプロダクションの事情を感じる(キャスティングが知名度や売出し都合ありきで役にマッチしてない。など)かつ脚本家に寄せたつくりというのが、またドラマっぽくなっております。

5.そもそもターゲット層が、テレビドラマ層に向いていた!?

今さらそもそも論ですけれど、企画段階で決まっていたように思います。スタッフ、主要キャスト、そしてコメディというジャンル、全てターゲット層がテレビドラマ層を意識しています。
映画好きな人が引っかかる要素は、蒼井優くらいでしょう。
当然構成もドラマを見慣れた人に合わせて作ることになるので、ドラマっぽくなるという事ですね。
そうなると、映画を見慣れた人にとってはうーん。となってしまうわけです。

まとめ

本作の正体は、ドラマ層にむけたドラマ映画という事でしたが、映画らしさとドラマらしさの違いについてちょっと詳しくなれたのではないでしょうか?
今後は、観る前にキャストやスタッフを確認した段階であ、これはドラマだな。映画だな。なんて意識してみるのも面白いかもしれません。

とはいえ本作は
「笑いあり、仲間あり、恋愛あり、スポ根あり」の爽やかな万人ウケする作品です!

スポンサーリンク
スポンサーリンク