映画ローラ 感想・考察「ヌーヴェルヴァーグ作品の見方が分かった!セシルという名前の二人の意味とは?」

※結構ネタバレ致します。

lola ポスター画像

「ヌーヴェルバーグの真珠」と評されたジャック・ドゥミ監督の長編デビュー作にして*ローラ三部作の第一部とも呼ばれています。ジャック・ドゥミ作品の始まりであり、原点的な作品です。
*本作と「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人」の三作のこと。

「3秒あらすじ」
舞台は港町ナント。キャバレーの踊り子ローラは、七年前に出て行った初恋の男性を待ち続けていた。そんな折に十年ぶりに友人ローランと再会。ローランは初恋相手であるローラへの変わらぬ思いを確信し、彼女に愛を告白するが…。
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すれ違いの恋模様が切なすぎる

こう書くと各種邦画でも必ずといって良い程、演出的に出てくるアレですよね?ってお思いの方もいらっしゃるかと思いますが本作のすれ違いはそこらへんの演出的なものとは訳が違います。ハッピーエンドのための盛り上げ的な効果ではなく、すれ違いそのものによる感情の揺れ動き、人生のおかしみ、切なさ、哀しさそのものを本作が描いているからです。

本作で、ローラ(アヌーク・エーメ)は初恋の男性ミシェルを待ちわびて、ローラン(マルク・ミシェル)に一瞬傾ぐ瞬間が訪れます。
二人の恋、未来に一条の光が差した瞬間”初恋の呪縛を抜けて目の前の幸せを掴む話”なんだと私は思いました。
その直後、ローラの目の前に現れるミシェルの姿のなんと切ない事か。こんなにもほろ苦い幸せの情景があるだろうか。
ミシェルに抱きつくローラのシーンを見た時、私が感じた痛みはローランのものだったのだと思います。

そしてラストシーンでは、ローランは一人「もうここに戻ることはない」と旅に出る事になります。
ローラはミシェルと息子イヴォンと三人で車に乗っていると、歩道を一人歩くローランを見つける。
視線を投げるも何も語りかけず、目も合わず、文字通りすれ違ってエンドロールになります。
このラストシーンにあったのは「こうであったかもしれない幸せ像」だったのではないだろうか。
ローラの中に生まれていたに違いない二つの異なった幸せをほんの少しのすれ違いによって決定的にさせてしまった運命のおかしさと残酷さ、切なさを全く見事に描いてしまった作品です。

初恋は決して消えない!その喜びに満ち溢れている!!

本作には初恋の抗えぬ魅力、純情。そしてその喜びを余す事なく描いています。
ローラは14歳の頃、お祭りで水兵だったミシェルに一目惚れしてしまったというエピソードをローランに語ります。そしてミシェルの事を今でも愛し、待ち続けている。とも
片やローランも10年前に初恋だったローラへの変わらぬ気持ちを告白し、その事により退廃的で自堕落だった彼の人生は一夜にして「人生は美しい」と言える輝けるものに姿を変えます。初恋が持つ力強さ、魅力を何度も何度も描いているんです。
そして終盤、何と言っても本作のハイライトシーンとなるお祭りのシーンですね!
人が恋に落ちる瞬間、そしてその喜びを体現した眩しさが拡散するグレイトシーン!

本作には二人のセシルがいます。一人は主役シングルマザーの踊り子ローラとセシル(アニー・デュペルー)という14歳の少女が同じ名前で出て来ます。
セシルは14歳の誕生日にわずかな間、英語の先生だった水兵のフランキー(アラン・スコット)とお祭りを回リます。
共にゴーカートに乗り、はしゃぎ、コースターで興奮と楽しさに満面の笑顔をたたえるセシル。
フランキーとセシルは二人手を繋ぎ駆け出す。この瞬間!スローモーション!まとめていた髪が、風にたなびき、笑い合うセシル!
セシルの初恋を描くと共に、14歳のローラの初恋の記憶をも同時に描いているんです!こりゃ凄い!

その後母親デノワイエ夫人(エリナ・ラブールデット)が「何、この髪は!どうしたの?」とお小言を言うのが地味に良いです。それは初恋を知った髪なんですよお母さん!

その後ローランとの会話の中で、何度も「初恋はどうして消えないの?」と聞くセシルちゃんがとっても可愛い。
その後、何をおいても恋の成就を果たす事を選んでしまう。彼女もまた初恋の呪いにかかってしまった一人なのだ。
本作は初恋の喜びや輝きを存分に描きながら、その危うさを描く事を忘れてはいない。
それが子供ができた瞬間街を飛び出していってしまったミシェルの在り方であり、デノワイエ夫人のエピソードだろう。

まとめ

ローランがローラに振られてから、最後にツーショットで語り合うシーンで「幸せのことを願える事が幸せだと気づけた」というようなセリフがある。本作において最も皮肉的でありながら唯一の幸せのようにも思える。
運命は人生を翻弄するが、願い続ける事が幸せに繋がっているという事を本作では言いたかったのかもしれない。
初恋の喜びとすれ違いのほろ苦さを絶妙にミックスさせながら、愛に生きる人生を見事に描いたデビュー作にしては出来過ぎな素晴らしい作品。

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