映画「君の鳥はうたえる」三宅唱監督ゲストトーク解説まとめin松本レポ

君の鳥はうたえるポスター

11/16(金)にて長野県松本市の市民芸術小ホールで松本シネマセレクトの企画で、映画「君の鳥はうたえる」三宅唱監督ゲストトーク付上映が行われた。「若者たちの特別ではないけれど、輝かしい時間」を描いたという本作。インタビューとはまた違った解説を披露してくれた。私は、本作が大好きなのでもっと多くの人に見てもらいたい。私だけの知識にするのはもったいないのでぜひ読んで興味を持ったら映画を観て欲しい。観た方は誰かにおすすめしてほしい。

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基本情報

監督
三宅唱
脚本
三宅唱
原作
佐藤泰志
製作
菅原和博
製作総指揮
松井宏
出演者
-柄本佑
佐知子-石橋静河
静雄-染谷将太
音楽
Hi’Spec
撮影
四宮秀俊
製作会社
函館シネマアイリス
配給
コピアポア・フィルム
公開
2018年9月1日
上映時間
106分

「あらすじ」
函館郊外の書店で働く「僕」(柄本佑)は、失業中の静雄(染谷将太)と小さなアパートで共同生活を送っていた。ある日、「僕」は同じ書店で働く佐知子(石橋静河)とふとしたきっかけで関係をもつ。その日から、毎晩のようにアパートへ遊びに来るようになる。こうして、「僕」、佐知子、静雄の気ままな生活が始まった。夏の間、3 人は、毎晩のように酒を飲み、クラブへ出かけ、ビリヤードをする。佐知子と恋人同士のようにふるまいながら、お互いを束縛せず、静雄とふたりで出かけることを勧める「僕」。そんなひと夏が終わろうとしている頃、3 人の幸福な日々も終わりの気配を見せていた……。(公式HPより抜粋、引用)
函館の夏、まだ何ものでもない僕たち3人はいつも一緒だった― 佐藤泰志の原作をもとに、若手実力派俳優と新鋭監督がつくりだした、今を生きる私たちのための青春映画。三宅唱監督 柄本佑×石橋静河×染谷将太『きみの鳥はうたえる』2018年9月1日(土)新宿武蔵野館、渋谷ユーロスペースほか ロードショー!以降全国順次公開

三宅唱監督、紹介

1984年生まれ。北海道札幌市出身。
一橋大学社会学部卒業。
映画美学校フィクション・コース初等科修了。
1999:『マイムレッスン』『スパイの舌』といった短編作品を手がけた。
2010:初長編『やくたたず』を監督。
2012:『Playback』監督。
ロカルノ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品。
第22回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞を受賞。
2014:『きみの鳥はうたえる』にも出演したOMSBやHi’Specと、THE OTOGIBANASHI’SのBimたちのドキュメンタリー『THE COCKPIT』を発表。
第37回国際ドキュメンタリー映画祭シネマ・デュ・レエル新人監督部門正式出品。
第15回ニッポン・コネクションではニッポン・ビジョンズ部門審査員賞を受賞。
2017:森岡龍主演の時代劇『密使と番人』を監督。

※一部、ネタバレ致します。ご注意ください

右手が三宅監督。とてもナチュラルで明るい方。巧みな比喩や撮影現場のフランクな空気感も交えながら、一つ一つのシーンの成り立ちを言葉に落とし込んでくれた

ビリでもトップでもない微妙な立ち位置の若者達のたまらないリアル

いくつもの原作小説と異なった部分が、本作には存在している。これらは、いずれも
「若者たちの特別ではないけれど、輝かしい時間」を描く為に効果を発揮している。

一つは、主人公達の年齢設定。
原作:1980年代、三人は21歳前後。

映画:現代(2018年)さ人には25歳前後。

大学を卒業して、まだバイトという身分の”僕”が、より現代ではリアルで
青春の終わり感があるからだと監督は語っている。

二つ目は、脇役陣の年齢設定。
原作:主役三人は、一番年下。

映画:
下の代に、後輩が二人。上の代に森口という男がいる。

主人公達が中間の立ち位置の年齢層なのは、彼らの微妙な立ち位置、名付けえることができない空気感を出すためだ。

「一番頭いい、一番グレている、というキャラクターは分かりやすいし、ストーリーも立ちやすいけれど、トップでもビリでもない。同窓会では記憶に残っていないかもしれない奴らの物語にしたかった」

小説とは異なった視点で描いたからこそ、この物語を映画で肯定できた

小説:僕の一人称のみ

映画:少しずれた目線で撮っている

長回しを用いて、三人を丁寧に撮っているが、それとは別に後輩の二人や森口や店長と行った脇役も描かれている。
最も印象的なシーンはその脇役陣が函館の夜を越え、朝を迎えるカットだ。
実は、最も編集で揉めたカットだった。との事だが監督は

「主役三人だけを追いかけ続けたら、特別になり過ぎてしまう。他所の人にとっては特別じゃないけれど、その人にとっては重要で特別な出来事が町の朝には溢れていて、それらを丸ごと肯定しないとこの映画で扱っている物語を肯定できない」

と語る。

ラストシーンの佐知子の表情こそ、映画としての作品の価値

撮影最終日の最終カットとした素晴らしいラストシーン。

「喜怒哀楽どれでもない、それらを越えた謎の感情を帯びた石橋さんの顔こそ映画としての作品の価値だ」

向き合う、見つめることが大きな意味を持っている

これは各インタビューでも、何度も監督は言葉にしている。
代表的なのは、佐知子が約束をすっぽかした”僕”を見つめているシーン。
本来は、そんな相手を見つめたりせず、目を背けるのが普通だが、見つめている。

「初めは好奇の目から、そこからちょっとずつ愛情に変わっていく物語であり。人を好きになる為に見つめている。そして、観客も同じようにスクリーンを見つめているのが面白い」

函館の土地と結びついた人間描写が、情景の美しさをより魅力的にした

本作は、朝方や夜の青い光などを魅力的に捉えていると、各所で絶賛されている。
その理由の一つに土地と強く結びついた人間描写があった。

「原作小説自体、土地と人間の心が強く結びついている作品。だから、函館の空気に応じて、登場人物のシーンは左右されるのが、より本作の人間らしい感覚だ。土地に応じて人間の心は変わる。という思いが根底にあった」

ネットでも大評判だったクラブシーンは、クリントイーストウッド組の撮り方をリスペクトした

真偽は確かではないがイーストウッド組は、”リハなし、撮影本番一回だけの撮影。”をする。現場に入りカットを伝えず、どう撮るかを決めている際もカメラを回しっぱなしにする。

通常撮影:
「アクション」で演技、「カット」の声で一度オフの状態
俳優はその都度、ギアをゼロから入れたり切ったりする。

「カット」なくずっとカメラを回している。
俳優はずっと気持ちのギアを入れた状態。
がとても、やりやすいのではないか?と監督。

通常のクラブ運営状態のように3~4時間音楽も回しっぱなしにしていた。
互いの信頼関係の上、カメラのカットは、撮影側だけが自由にオンオフをし芝居をする役者陣もまた、各々の判断に任せて気持ちのオンオフを判断してもらった。
エキストラの人々もオンオフがないのでとても自然にいつものクラブでお酒を飲んで楽しんでいる人もいた。
ちなみに柄本佑さんも石橋静河さんも初クラブだったらしい。

OMSB「Think Good」ライブの歌詞は、映画の主題と密接にリンクしている。

三宅監督次回作は、来春公開予定

①、山口県、情報芸術センターYCAMでインスタレーション作品「ワールドツアー」

映画監督の三宅唱とYCAMの共同制作による新作インスタレーションを発表する展覧会です。映画製作プロジェクト「YCAM Film Factory vol.4」の一環として開催します。

②、同県にて地元の中高生と撮影した作品。「ワイルドツアー」を控えています。

山口情報芸術センター[YCAM]では、滞在型映画制作プロジェクト「YCAM Film Factory(ワイカム フィルム ファクトリー)」の第4弾招聘監督、三宅唱氏による最新作『ワイルドツアー』が公開されます。YCAM Film Fa...

まとめ

近い存在で、三人の”特別ではないけれど、輝かしい時間”を見つめ続けることで、親しさを覚えたと同時に、少しだけ外れた視線がまるで過ぎ去った我が事のように感じられて、見事に私ごとになってしまった120分だった。さらにトークイベントでなんでこんな風に感じるんだろう?に言葉の形になり理解できるのが本当に気持ちよかった。二人のアパートをよくある風情のある木造ボロアパートじゃなくて、フローリングの散らかった部屋にする。だったり、小説中の印象的な自転車シーンを、バッサリ切っちゃったりする安易さに対して慎重な姿勢や、リアルな感性がめちゃくちゃハマりました。

【関連作品】

映画『Playback』の公式ウェブサイト
映画『THE COCKPIT』公式サイト 監督:三宅唱 出演:OMSB(SIMI LAB)、Bim(THE OTOGIBANASHI’S)ほか ドキュメンタリー|2014年|64分|2015年5月30日公開
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