本作は、ロマンティックコメディにおけるレディ・プレイヤーワンである。
往年のロマンチックコメディ映画あるあるを存分に詰め込みながらも、本作自体も気の利いたロマンティックコメディ映画になっている笑えてハッピーな作品。
「往年のロマンチックコメディの元ネタをどれほど知っているか」
「どんな風にパロっているか」
をもし知っていたらどんなに本作は面白いだろうか!
本作を観た人はもう一度観たくなるし、観ていない人はもっと楽しむことができる
元ネタを徹底的にリサーチしてまとめてみました。
目次
基本情報
監督
トッド・シュトラウス=シュルソン
脚本
エリン・カルディロ
デイナ・フォックス
ケイティ・シルバーマン
原案
エリン・カルディロ
製作
レベル・ウィルソン
ジーナ・マシューズ
トッド・ガーナー
グラント・シャーボ
製作総指揮
マーティ・P・ユーイング
音楽
ジョン・デブニー
撮影
サイモン・ダガン
編集
アンドリュー・マーカス
公開
2019年2月14日(米)
2019年2月28日Netflixのみ(日)
出演
ナタリー-レベル・ウィルソン
ブレイク-リアム・ヘムズワース
ジョシュ-アダム・ディヴァイン
イザベラ-プリヤンカー・チョープラー
ホイットニー-ベティ・ギルピン
ドニー-ブランドン・スコット・ジョーンズ
トッド医師-トム・エリス
子供の頃、ナタリーはロマンティック・コメディ映画の世界観に憧れていたが、母親にその理想を打ち砕かれてからというもの恋愛に消極的になり、ロマンティック・コメディ映画が大嫌いになってしまった。
そんなある日、ナタリーは地下鉄の駅でひったくりに襲撃され、意識不明で病院に運び込まれることになった。意識を取り戻したナタリーの周囲は奇妙なことばかり起こる。ナタリーは、PG13指定のロマンティック・コメディ映画の世界に迷い込んでしまったのだった。ロマコメの王道展開に巻き込まれてうんざりするナタリーは、一刻も早く元の世界に戻るべく奮闘するのだが…
過去20年分のロマンティックコメディの共通ネタがずらりと並ぶ
トッド・シュトラウス=シュルソン監督は、1988年から2007年に公開された65作以上のロマンティックコメディー映画を見通して設定や演出、小道具ディテールに至るまで細かな共通点を探しました。
その分析結果の一部をInstagramで公開している。
- ニューヨークが舞台
- スターバックスのコーヒーを飲む
- 半月型の窓
- ヒロインカップルがキスした時に降る雨
- 泡風呂
- 可愛い犬とドッグウォーカー
- カニの甲羅
- 主人公にはゲイの友人がいる
- なぜかオフィスの友人はライバル関係
- 着せ替えシーンがある
- ヒロインはラストになるとスローモーションで走る
といったものを見つけ出して本作に取り入れている。
作中にセリフや画像で実際に出てくる8の作品
実際のロマコメ映画がTV画面やセリフを通して数多く出てくるのが本作の特徴だ。
実際の映画を引き合いに出すのは、映画ファンにはたまらない。
自分の好きな映画と好みがあっただけで、抜群の親近感が湧く。
出て来た作品は、全8作品。紹介していこう。
①「プリティウーマン」(1990)
冒頭、子供のナタリーが観ている映画。
②「ウェディング・シンガー」(1998)
親友の女友達ホイットニーがオフィスで観ている映画。
③「フレンズ」(1994)(TV Series)
ジョシュがナタリーとの「水餃子」の対話の中で出てくる。
④「ノッティングヒルの恋人」
⑤「13ラブ30サーティン・ラブ・サーティ」(2004)
ジョシュはナタリーに、この映画を見たことないのか?どうか尋ねる。
⑥「マトリックス」(1999)
ナタリーは、自分が迷い込んだPG13指定のロマンティック・コメディ映画の世界を「独身女性用のマトリックス」と比喩する。
⑦「LAW ORDER:性犯罪特捜班」(1999年)(TVシリーズ)
医師は、ナタリーに彼らが今日病院で撮影していると告げる。
⑧「メラニーは行く!」(2002)
ホイットニーがナタリーに「朝のニュースで落ち込んだら観る」傑作だと言っている。
シーンやセリフなどをオマージュしている作品はなんと120作
トッド・シュトラウス監督はインタビューの中で「120の作品やシーンなどへの暗喩などが含まれている」と発言しているが、具体的な作品名やシーンには言及していない。
なので、以下は筆者が推察したオマージュ作品を列挙してみます。
①「プリティ・ウーマン」(1990)
・ナタリーがデートのために着た赤いドレス
・病院から出て着た時に着ていた白いドレス
はいずれもプリティウーマンのジュリア・ロバーツのドレスデザインオマージュ。
オープニング曲、オープニングシーン画像とふんだんに使われており、最もオマージュされた作品といえる。
②「ベスト・フレンズ・ウェディング」(1997)
ニューヨークを舞台に料理記者として活躍するキャリアウーマンのジュリアンは、大学時代の恋人が結婚する報せを受けて大ショック。今も残る彼への思いに気づいたジュリアンは、何としてもこの結婚を阻止せねばと鼻息も荒く、彼の滞在先のシカゴに乗り込む。
という話。結婚式の重要なシーンは思いっきりこの映画のオマージュだった。
そしてこちらもジュリア・ロバーツが主演。
本作にとっての明確なラブコメヒロイン像はジュリア・ロバーツなのだ。
③「きっと星のせいじゃない」(2014)
オーストラリアのキザ男ブレイクのセリフにある
「ドンペリは星の味がする。彼は僧侶だった」
は、この映画のガスとヘイゼルがアムステルダムのディナーをするシーン。
粋なウエイターがシャンパンを開ける時のセリフのオマージュだ。
“I am tasting the stars.”
「今、星の味をみてるよ」
※シャンパンを発明したフランスの修道士ドンペリニヨンの有名な一言をもじっているセリフです。
④「シングルス」(2000)
ナタリーが、店前でくしゃみをしたらブレイクが「Bless you!」と間髪入れずに言うシーンは、この映画の暗喩。
この映画で、ブリジット・フォンダは「男の人に多くを望まないけど、クシャミをしたらせめて「Bless you!」ぐらい言ってくれる男が良い」と言っている。そしてこの一言が恋の歯車においてとても重要な役割を担っている。
⑤「ティファニーで朝食を」(1961)
ナタリーの部屋がロマコメ世界では、ティファニーブルーで統一されている。
直接のオマージュではないけれど、遠回しな暗喩かもしれない。
⑥「恋人たちの予感」(1989年)
ナタリーとジョシュが水餃子を食べて、快楽に喘ぐシーンは、この映画のメグ・ライアンのフェイクオーガズムをオマージュしたとレベル・ウィルソンはインタビューで答えている。
また、お互いを理解しあっている友人同士が恋に発展するかもしれない?という心のゆり動きは本作ナタリーとジョシュにも共通する部分。
⑦「ウェインズ・ワールド」(1992)
ジョシュがイザベラとの演説の中で引用している。
「Im not so Worthy!」
(俺にはもったいない!)
は、この映画の憧れの人に会った時のリアクションを引用した。
⑧「アイ・フィール・プリティ! 人生最高のハプニング」(2018年)
自分に自信のなかったレネーが、ジムで頭をぶつけてしまい目覚めたら、自分自身が魅力的に見えるようになっていた。というお話。
口コミでは、よく比較名として上がっている。
確かに基本プロットが似ていますが、公開時期的にもおそらく偶然被っただけでは?という気もしないではない。
⑨「今晩は愛して頂戴ナ」(1948)
本作のタイトルである「isn’t it romantic」はこのミュージカル映画に使われた挿入歌から取られている。
どこかで耳にしているロマコメ挿入歌は8曲
①「Oh, Pretty Woman/Roy Orbison」(1964)
映画「プリティウーマン」の主題歌。
●冒頭で使用されている。
②「I Wanna Dance With Somebody (Who Loves Me) /ホイットニー・ヒューストン」
映画「13ラブ30サーティン・ラブ・サーティ」にて使われた。
●ナタリー・ジョシュ・イザベラを含めた最も重要なミュージカルシーンにて使われました。
③映画「避暑地の出来事」のテーマ/パーシーフェイス(1959)
●ロマコメ世界で目覚めるシーンにてかかっている。
④A Thousand Miles/ヴァネッサ・カールトン(2002)
映画「メイド・イン・マンハッタン」の主題歌。
●ロマコメ世界で、ナタリーがNYの街へ踏み出した時にかかる。
⑤Everybody Everybody/Black Box(2009)
映画「クールアズアイス」(1991)にて使用された。
⑥The Lady In Red /クリス・デ・パー(1986)
映画「ワーキング・ガール」などにて使用された。
⑦Kiss Me/Sixpence None The Richer(1999)
映画「シーズ・オール・ザット」の主題歌。
●イザベラがカラオケで歌っていた。
⑧Express Yourself/マドンナ(1989)
映画監督デヴィッド・フィンチャーがミュージック・ビデオを初めて手がけた作品。
●エンディングミュージカル曲。
まとめ
改めて列記してみると、そのロマコメ愛に胸を打つ。
そして懐かしい作品の数々!
本作を観たら、ぜひついでに気になったロマコメ映画をはしごしてみるのも本作の楽しみ方の一つかもしれない。
【関連作品】
レベル・ウィルソンの出世作。ファット・エイミーあっての大ヒットだった。