映画 阪急電車 感想「聖地プロモーションの凄さと親切心の素晴らしさ」

※結構ネタバレ致します。
※キャスト、スタッフ、あらすじ等の詳細情報はカットしております。
気になる方は、wikipediaページ、チェックしてみてください。

阪急電車公開ポスター

これは、立ち向かう女達の話だ。そして彼女(時に彼)らのその小さな戦いを応援する話。
人には言えぬそれぞれの問題を、電車をたまたま乗り合わせたしか縁のない人が、おずおずと差し伸べる手心に宿った温もりが人と人をつなぎ、また小さな勇気や優しさを生み出す原動力になる。そんな小さな奇跡を束ねたオムニバス人情映画です。

「3秒あらすじ」
阪急電車((今津線)沿線に住む、異なる悩みを抱えた7種の人々が送る苦い日常のその1パート。片道15分の往復電車内に乗り合わせた人々が、かわす心の触れ合いで生まれる人の情と温もり。そしてその連なりが、それぞれの心の灯火に変わるのを描いたオムニバスヒューマンドラマ。
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”立ち向かい”の美学が各所にあふれている

苦い悩みの渦の中で、立ち上がる瞬間ばかりを描いた本作は、本当に多くの立ち上がり方(言うなればカッコいい人の成り方)を
存分に紹介している作品でもある。
1人目の彼氏を会社の後輩の女に寝取られた女。翔子(中谷美紀)はビジュアル的にもエピソード的にもキーキャラクターだが、その戦い方は実に派手でタフで、そして最も自分の心を抉る手段だった。
彼女は彼女らしくたくましかったが為に他の女に取られ、そしてその後の彼女は社会の常識、マナーに唾を吐き自分らしくある事を選んだ。そのりつ然とした生き方に宿った美しさ。格好良さは目に見えないが、感じとり心に刺さるようであった。

また、本作の特に人間味溢れる部分は、ミサというDV男の彼を持ち別れる勇気がつかない女(戸田恵梨香)が、別れを彼氏に告げた後、ストーカー化してしまった時、最終的には友人とその彼氏に力を借りて完全に縁を立ったところだ。
人間一人が奮い起せる勇気などたかが知れている。メールの文面を作り送信する勇気は持てても、DVを頻繁に行う暴力的な男を
面と向かって撃退する事も、警察沙汰にする勇気も突然湧き出るものではないのだ。
「人は一人じゃない」というより、「一人で出来る事なんてそんなに多くはない」と本作はさりげなく伝えている。
だからこそ、他に出てくる悩みを抱えたキャラクター達も、自分の力では解決する事が出来ず苦々しい思いを抱きながらも日々を過ごす事に甘んじてしまっているのだ。
そうして誰かの力を借りて解決したからこそ、余裕を持った時、別の似たような誰かが困り弱っていたなら、手を差し伸べる事は至極自然な事に変わるのだ。
そんな一人では出来ない解決と親切が続いていく世界は正に”奇跡”と呼んでも大げさではないのかもしれない。

”認める”素晴らしさに満ちている

立ち向かう人々を描きながらも、それらの人々を肯定する優しさも溢れている。本作の親切さは、いつも認める事に主眼を置いている。翔子を励ますご意見番の老女、時江(宮本信子)といい、いじめにあっていた少女を励ます翔子といい、また圭一(勝地涼)、美帆(谷村美月)のカップルもまたそうだ。
皆、自分が今いる場所にうまく馴染めないで浮いてしまっている(もっと言えば理不尽な立場に追い込まれてしまっている)人々だが、そんな彼、彼女らが居場所を見い出す事こそ本作の大きなカタルシスの一つだ。
ただ「あなたは間違ってない」というありふれたその一言が、自分自身を生かすのだ。
初めから最後までひたすらにラブリー街道、一直線の圭一と美帆カップルのモノローグの中に「どうして貴方は…」というセリフがそれぞれで2度出てくる。
その続きはきっと(欲しかった言葉をくれるのだろう)ではないだろうか。
そしてその言葉はいつも必ず相手を認める言葉だ。

不意に自分を認めてもらった時に生まれるなんとも言えぬもどかしく抑えがたい喜びを本作は、何度も丹念に描いている。
波が次の波を飲み込むかのように連なって、喜びを受け渡していく光景は、縁を繋ぎ恩を回していく。
昔から連綿とある日本人的美徳なのではないかと思う。
祥子がラスト口にする「世の中捨てたもんじゃないよね」というセリフににじんだ思いは、きっと「分かってくれる」ことでも
「分かり合えること」でもなく、他人が他人を自然と助ける事が出来るそんな世の中の事への感謝の思いだったのではないだろうか。本作を観た事に寄ってバトンを受け取ったかのように思えたなら、それはやっぱり身をもって「捨てたもん」じゃないことの証明になるのだろう。

阪急電車の聖地プロモーションが素晴らしい

阪急電車そのものや、各ロケ地へのプロモーションが実に行き届いています!
エピソード以外の面で聖地拡散的なものを多分に仕込んでいるんです!
知ってる人なら、(エッ!ここは!!)感請け負いですし、聖地巡礼目線でも長閑で景観豊かな形式とレトロおしゃれな阪急電車そのものの車体が実にそそられる素敵な映画映えするロケーションとして映し出されております。
なんでもない兵庫県の一都市なんですが、不思議と見終わると我が心の「いつか行ってみたい場所リスト」にしっかり刻み込まれてしまいました。

そして細部まで現地のリアルさにこだわった演出が実にニクい!
タッチパネル、リアルな車窓、車内アナウンス、発車音、運転席からの前方の景色、線路沿いからの電車が向かい来る景色、そしてその四季折々、また、各駅の店舗、街路、建物など、そして小林駅フィーチャー!
ホーム、改札、伝言板に駅前の商店街まで!
ここまで現地を実際に落とし込んだ映画は珍しい。
映画の舞台なんかは、現実的な事情で雰囲気さえ出せればと、別のところでロケする事がほとんどの中、本作は本当に現実世界をフィーチャーして作っている。
おそらく阪急(今津線)沿線の駅の皆様もとても理解ある人達なのでしょう。そういった見えない部分が醸し出している素の舞台の良さが溢れ出している聖地ムービーとして素晴らしい完成度だと思います!

まとめ

とにかく、多種多様な勇気と強さを描きつつも、ほんの少しの手心、気まぐれな親切とでも呼べるようなさらりとした優しさによって、人はあっという間に救われてしまうのだという現金な心。人の持つ力(奇跡)を描いた作品だと思う。
本作を見ると、ほんの半歩勇気を出してみようかと思えるし、浮かない顔のあの人にほんの一言声をかけてあげようかな。という気にさせてくれる。人が持つ優しさと強さを改めて見せ、自分の中のそれらを引き出してくれる良作です。

こちらは原作!

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