映画ダンケルク 感想「音響が凄い。圧倒的リアルな臨場感!最も戦争体験できる映画」

※結構ネタバレ致します。

ダンケルク公開ポスター

「これは、戦争映画ではない」という言葉は、クリストファー・ノーラン監督その人の言葉でもあるが私もそれに賛同したい。
本作には、感動的な人間ドラマも、明確な主人公もいない。ひたすら106分間、恐怖の戦場を臨場体験する作品だ。メッセージではなく、体験する事。それこそが、史実「ダンケルクの救出劇(ダイナモ作戦)」が以後のイギリス人に与えた精神性”ダンケルク・スピリット”を観衆が受け取る唯一の方法だったのではないかと思う。

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基本情報

監督・脚本
クリストファー・ノーラン
製作
クリストファー・ノーラン
エマ・トーマス
製作総指揮
ジェイク・マイヤーズ
グレッグ・シルバーマン
出演者
フィン・ホワイトヘッド
アナイリン・バーナード
ハリー・スタイルズ
バリー・コーガン
マーク・ライランス
キリアン・マーフィー
トム・ハーディ
ケネス・ブラナー
音楽
ハンス・ジマー
ローン・バルフェ
ベンジャミン・ウェルフィッチ
撮影
ホイテ・ヴァン・ホイテマ
編集
リー・スミス
製作会社
ラットパック=デューン・エンターテインメント
シンコピー・フィルムズ
スタジオカナル
カープ・ホランド・フィルム
ドンビー・ストリート・プロダクションズ
配給
ワーナー・ブラザース
公開
2017年7月21日(英・米)
2017年9月9日(日)
上映時間
106分
製作国
イギリス
アメリカ合衆国
フランス
オランダ
言語
英語
製作費
$100,000,000
※wikipediaより抜粋。

「3秒あらすじ」
ダンケルクの浜でドイツ兵に囲まれ、取り残された英仏同盟軍40万の兵士がいかにして脱出、救出したかが描かれている。
(史実が元になっている)

さて良いところを書き綴る前に一つだけ注釈をしておきたい。
本作は史実を元にしており、またイギリスではこの「ダンケルクの戦い」奇跡の救出劇は、とても有名なトラディショナルな話という事だ。また現在のイギリス人の中に宿る国民性の一つにこの戦いで人々が宿した”ダンケルク・スピリット”が脈々と受け継がれているだろうという事。
つまるところ、本作は”ダンケルク・スピリット”をどこにどう感じるかという事なのではないかと思う。

さて戦争の救出劇といえば、すぐに思いつくものが同じく日本では今年公開された「ハクソー・リッジ」だ。
こちらも実話だ。50人以上もの人を戦地から救い出した男デズモンド・ドス。彼は間違いなく英雄であり、また間違いなく美談だった。そこで、あの作品を観たときに自分が率直にどう思ったのかというと”絶対にこんな真似できない”だ。
デズモンドドス・スピリットは私の中に生まれていない。あれは彼の人生の中で育み得たものによって、成し得た偉業だからだ。
それでも、彼の偉業から「環境や事情が違えど、人間は大いなる力を持っている」それを教えてくれた。
本作のアプローチは真逆だ。
根本的に「ダンケルクの戦い」が持っているものは名も無き一人一人が力を振り絞り成した大業だからだ。そこをフィーチャーする為に本作は体験型という形をとったのではないかと思う。(もちろん今までにない戦争映画の切り口だったのもあるけど)

主人公なき圧倒的な臨場体験

何度も書いてしまっているけれど、本作のこの体験感覚は徹底している。
まず、陸・海・空の3つの視点からエピソードが進んでいくが、状況を追いかける上で必要な装置としての中心人物はいるが、彼らのバックボーンもキャラクターも思想も宿っていない。だからこそ、それぞれの視点の人物達が体験する事はダイレクトに観ている自分が体験しているかの錯覚に陥る。

焦りと不穏さと恐怖に満ちた音響効果

時計の針をミックスしたタイムウォッチが常に聴こえ、追い詰められていく時間との戦いが皮膚感覚に迫る。また近づいてくるエンジン音、落ちる爆弾の落下音、着弾の爆撃音など無防備な状態での空爆による恐怖。銃火による連続した砲撃音。そして、不穏で緊迫させ、緊張を強いるBGM。音によって体感的に脳に訴えてくる臨場感がとにかく凄かった。

ほぼ全てリアルな再現描写

ロケ地は実際のダンケルクの海岸。飛行機もドイツ機メッサーシュミット、英機スピットファイアも実物を用いて撮影されている。船もリアルな船がなんと62隻(当時の海掃艇、病院船も含まれている)、防波堤も当時を再現する為、150mも増築した。等々もはやあらゆるものがリアルそのもので、再現性はずば抜けている。
それだけじゃない、閉所で水が迫ってくる重さ、早さ、海が持つ恐しさ。空戦における敵機に後ろを取られる恐怖。仲間を襲う敵機の恐怖(大型駆逐艦をいともたやすく沈め海へと還す火力、機動力)。
浜で空爆が持っている無作為で、即殺的な爆発などの演出も実に見事に描かれていた。

また、本作は一度もドイツ兵の姿はでてこない。
爆撃機の敵影とどこからか撃ってくる銃火、魚雷があるばかり、見えない敵に怯え救出の目にすがりつく一兵卒こそ、観客が最もリンクしやすい立ち位置だ。
心、耳、目のそれぞれで追い詰められていく戦場の恐怖を体感させられる仕掛けが随所にあふれている。

救出者達の目線が素朴ながら強い社会性を帯びている

民間船が徴用され、救出の為に船を出すムーンストーン号の面々に代表されるが、上記のような臨界状態の戦場に飛び込む事を彼らは恐れなかったわけではない。それよりも強く、自分たちも何かしなければという想いが共通して溢れていた。
ただ逃げ惑うだけの話ではなく、本作はヒューマ二ティから成る救出劇だという事を語る上でとても大切な要素だ。
ムーンストーン号の船長MRドーソン(マーク・ライアンス)の息子が戦死してしまった短いエピソードがとても印象的だった。自分の手で誰かを救出することが彼にとってはことさら重要だったに違いない。
本作で唯一の個人的な事情だが、救助する側の人間達が持つ動機に触れておく事で、戦時中の誰もが抱えていた感覚を観客に与えたかったのではないだろうか。
トムハーディー扮する空軍パイロット ファリアもまた帰投する事なく最後の一機を撃墜するまで浜に残る事を選んでいる。これら美談に全くのドラマ的演出を用いず淡々とシーンとして見せているのはのはきっと、この「皆を救う為、自分が為すべきことを成す」という社会性、人間性が一貫して生まれていたからだと私は思う。

まとめ

ダンケルク・スピリットがもっているものは本作から捉えるに二つある。一つは逃げる側の「屈せず、諦めぬ意思」。もう一つは、助ける側の「自分が為すべきことを為す」といういずれも「生き延びる為の社会的団結力」に繋がる。言葉にしてしまうと実にうさん臭い、美談となってしまうが、それがつまりどういう事なのか?を全体の一人として体感する事で初めてこの精神性を理解できるのだと思う。おそらくラストシーンで使われたチャーチルの言葉は、好戦でも反戦でもなく、本作全体を通じて蘇ったダンケルク・スピリットの輪郭なのではないだろうか。

貼るものないから、ノーラン監督の傑作達を貼っておきます。大切なので二度言いますが傑作です。

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