Netflixアニメ「ラブ、デス&ロボット」感想ーブラック・ミラー/エレクトリックドリームズと比べてみて

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名監督デビット・フィンチャーと「デッドプール」の監督ティム・ミラーによる短編SFアニメーションのアンソロジー作品。2話を除いて全て原作が存在する1話10分〜20分程度の全18話シリーズとなる「Love、Death + Robots」。

オムニバスSFの配信作品といえば、Netflixの人気シリーズ「ブラック・ミラー」とAmazon primeオリジナルのヒット作「フィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームズ」が思い浮かびます。

これらの作品と、どう違うのだろうと思っている方もいるかと思いますので今回は、本シリーズの魅力について、ブラックミラーとエレクトリックドリームズとの違いおよび共通点にスポットを当て紹介します。

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「ブラック・ミラー」シリーズと共通するビターさ

本シリーズも「ブラック・ミラー」(以下BM)や「フィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームズ」(以下FDED)のSFオムニバスの系譜を受け継いでビターエンドが目立ちます。18話中13話はビターもしくはダークエンドです。
その中に込められたテーマや趣向はさまざまですが、まずはビターな作品が好みの方のためのシリーズです。

「フィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームズ」と共通するファンシーSF設定が満載

本作はSFと呼ぶよりもむしろファンタジーと呼ぶに相応しい短編が数多くあります。
その点でFDEDとよく似ています。

第5話 魂を貪る魔物(原題:Sucker of Souls)

第9話 ゴミ捨て場(The Dump)
ゴミのやつ

第16話 氷河時代(Ice Age)
氷河期

などはファンタジーアニメとして楽しめるような作品です。

特にファンタジーとして素晴らしいのは、第12話 フィッシュナイト(Fish Night)です。
Fish Night

「あらすじ」
アメリカの片田舎、誰も来ない旧道のハイウェイで立ち往生してしまう父息子がおもむろに「ここもはるか昔は海だったそうだ」と語り、夜になると幻の海中の中だった

「古代の海の幽霊」というファンシーなテーマもさることながら、その幻想的なアニメーションは細田守作品「バケモノの子」「未来のミライ」の現実と空想が重なりあう描写を彷彿とさせる美しいものです。

「ブラックミラー」に共通するブラックなユーモア

「デッドプール」のティム・ミラー監督が総監督の時点で、ブラックユーモアが入っていないわけありません。
そして本シリーズで最も多くの作品を拝借した作家ジョン・スコルジーによる話は特にユーモラスなブラックユーモアに溢れています。

ジョン・スコルジーによる原作作品は

第2話ロボット・トリオ(原題:Three Robots)

第6話 ヨーグルトの世界征服(原題:When the Yogurt Took Over)
ヨーグルト

第17話 歴史改変(Alternate Histories)
Alternate Histories

です。

BMはいかにもイギリス作品らしい真顔で超辛辣なブラックジョークを挿入してきましたが、本作はどの作品もブラックながら根底はユーモアに満ちています。

個人的には、第2話のロボット三人組のロボットシットコムなノリが好きです。
ロボットが頭には全くはまらないキャップを被っているのは、『楽園追放 -Expelled from Paradise-』で出てきたシンギュラリティ後のAIキャラクター「フロンティアセッター」を彷彿とさせます。ジョークを介するロボットってどうしてこんなに愛らしいんでしょうか。

「エレクトリックドリームズ」と共通した人外の意思の探求

SF作品における大問題は、世界や身体が変化してしまったとき、意識や意思はどんな変化反応を起こすのか。ということです。
FDEDは全作品が人の心や意識に重きをおいたテーマでした。
この意識の探求や思考実験こそ、SF作品を楽しむ一つの醍醐味です。

本シリーズの場合

第8話グッド・ハンティング
good hunting

第14話ジーマブルー
ジーマブルー

この二つは示唆に富んでいて、意義深い作品です。

特に推したいのは第8話「グッド・ハンティング」。

「あらすじ」
産業革命以前の中国を舞台に、妖狐との対決と交流を前篇。後編に至るとテクノロジー革命まで産業革命が爆発的に発達しており超人的な発明まで生み出せるようになった主人公は妖狐の超人的な力を機械で蘇らせようとする。

前篇で古式豊かな情景を見せながら、後半で一変する機械化文明の中にロストテクノロジーを代替復興させるというダイナミズムが込められています。
消滅してしまった悲しみではなく、代替可能なもので人間の中にある信仰やプライドを守ろうとする試みは本当に尊く心に響きます。

原作は、原作はケン・リュウ著作「良い狩りを」(もののあはれに収録)。
本シリーズで唯一邦訳されています。

第14話ジーマ・ブルーもまた他の口コミの中で人気の高い「心に残る作品」。

「あらすじ」
謎の天才アーティストジーマが生み出した空の色でも海の色でもない彼だけのブルーの四角形。それに惹きつけられれる人々。そしてジーマも人々の熱狂に応えるように作品の規模をより大きく壮大にものにしていく。そんな中、彼はこの作品で最後の作品にすると公表する。その作品は…ジーマの正体とは。

ジーマの正体が明かされ、最後の作品の意味を観客が理解したときに感じる”何かへの回帰の憧れ”は一体なんなのだろうか。どうして人はより複雑な世界を作り出しながらも、原初的なものへの回帰を夢に見るのか。ジーマブルーの意味が明かされたときに胸の中に去来する想いはしっとりと心に残ります。

以上が「ブラックミラー」と「フィリップ・K・ディックのエレクトリックドリームズ」との共通点でした。

次は「ラブ・デス&ロボット」ならではの点をご紹介します。

「ラブ・デス&ロボット」ならではの迫力のバトルシークエンス

動かなければアニメではないというほど、バトルアクションが核となった作品が豊富です。

第1話ソニーの切り札(Sonnie’s Edge)

第4話 スーツ(原題:Suits)

第5話 魂を貪る魔物(原題:Sucker of Souls)

第10話 シェイプシフター(Shape-Shifters)

第13話 ラッキーサーティーン(Lucky 13)

第15話 ブラインドスポット(Blind Spot)

第18話 秘密戦争(Secret War)
秘密戦争

と合間合間にアクション主体の作品が挿入してあるので、流して観ても見応えがあり中だるみしません。

アクションアニメーションはいずれも素晴らしいモーションです。
クリーチャーやキャラクターは滑らからに動くし、銃撃戦はド派手なガトリング、爆炎、レーザーと多様な攻撃スタイルで飽きません。

アクションアニメーションが大好物な方は、とりあえず1話を見て下さい。
クリーチャーが持つ生物的な重さや速さ、痛みの描写は見事です。
作品ごとの特色はあれど、このクオリティから下がるバトルアクションは一つもありません。

個人的には、第10話 シェイプシフター(Shape-Shifters)が素晴らしかったです。

「あらすじ」
ゲリラ戦での戦闘に対してアメリカ軍は、人と狼とのキメラ兵器(シェイプシフター)を導入する。
人間の肉眼では確認できない位置から狙撃手を見つけ出せる目と、待ち伏せを匂いで察知する鼻を持つ彼らは重宝されるが、また隊内の差別も激しい。そんな中で、相手側にも同じくシェイプシフターが存在し…

シェイプシフター同士のバトルが素晴らしい。
人が獣に変わるアニメーションは数あれど、完璧に狼VS狼ではなくキメラ同士のバトルというのが新鮮でした。

アニメならではの非現実な映像美

映像美の素晴らしさは、目をみはる作品がいくつもありました。
この点についてはBMもFDEDも相手になりません。
直近のハリウッド大作である「アリータ」や「スパイダーマン:スパイダーバース」級の映像美です。

第3話 目撃者(原題:The Witness)
The Witness

第8話 グッド・ハンティング(Good Hunting)
Good Hunting

第12話 フィッシュナイト(Fish Night)
Fish Night

の3話はずば抜けて美しい映像美を堪能することができます。
幻想的でありながら、細部までよく描き込まれた世界は白昼夢のような美しさを持っています。

特に原作の存在しないオリジナル作品である第3話「目撃者(原題:The Witness)」の実写と紛うほどのリアルな描写ながら、アニメーション独自の揺らぎ感や緊迫感も持っているのが素晴らしい。ストーリーは映画「インセプション」のような入れ子構造の逃げる者、追う者の夢中世界感ですが、背景の描き込みがすごいことになっているのが個人的な見所。

第8話 グッド・ハンティング(Good Hunting)は、中身の点で先ほど言及しましたが、テクノロジー革命後の世界感とカラクリ描写のディティールがとても美しいです。19世紀産業革命meetsロボテクノロジーながら、あくまで中国が舞台なので東洋的な世界観と織り混ざっている背景もまた美しいです。スチームパンクとはまた違った良さがあります。

配信ならではのR18アダルト描写の数々

日活ロマンポルノ映画かと思うくらい、短い作品の中にエロ描写が挿入されています。BMも配信だったはずですがその比ではありません。
(もっともBMの規制はエロではなく、グロに向いていましたが)
エロというより、ぼかしや遮蔽物で隠さないという描写です。映画「ニンフォマニアック」に似た18禁描写というと観た方は分かるでしょうか。エロいというよりは、モロ出しなのです。その点、セクシーさや妖艶さを期待するほどではないのですが、数としては多いため一つの特色ではあります。

第1話 ソニーの切り札(Sonnie’s Edge)

第3話 目撃者(原題:The Witness)

第7話 わし座領域の彼方(Beyond the Aquila Rift)

は特にはっきりと裸体が登場します。
この点についても第1話が最も過激ですので、こちらを観て気にならない方は作品群を楽しめると思います。

Sonnie's Edge

「Sonnie’s Edge」trailer

まとめ

個人的にはとても楽しめたオムニバスシリーズでした。何より、amazonがフィリップ・K・ディックのようなヒット映画化多数の大家に目を向けている中で、こういった未だ世界的には十分に人気を確立していない作品を掘り下げる辺りにNetflixの気概を感じます。

Netflixオリジナルアニメも多くありますが、本作は何しろ1本が短いので良いポイントだけ抽出している感があり非常にテンポ良く観やすいシリーズとなっています。
とりあえず1話~3話,8話を観て良ければ貴方にとってきっと当たりシリーズです。

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