2が出ると聞いてから、むしろSWの続編よりも期待してました。もう現代でクリストファー・ノーランと同じ位信用してる監督マシュー・ヴォーン。本作も最高でした。マジで開始 秒でアガるッ!広告に偽り無し!と迫力のバトルと構成の爽快感だけでも十分に最高だけど、もっと色々なネタがふんだんに込められている!
そんなところも楽しめる一助にならん!とこの記事を書く。
ぜひ、ご一読して観てほしい。すでに観た人はふーんと顎を小さくしゃっくった後、こっそりもう一度観るのをオススメしたい。
ちなみに先にお伝えしておきたいが、本作は1を観た方が100%楽しめる作りになってます。ぜひ1を観てからご鑑賞をおすすめします。
目次
基本情報
監督:マシュー・ヴォーン
脚本:ジェーン・ゴールドマン、マシュー・ヴォーン
原作:マーク・ミラー(キャラクター創作),デイヴ・ギボンズ(キャラクター創作)
公開日:2017年9月22日(英,米),2018年1月5日(日)
出演:
ゲイリー・“エグジー”・アンウィン-タロン・エガートン
ハリー・ハート-コリン・ファース
ポピー・アダムズ-ジュリアン・ムーア
マーリン-マーク・ストロング
ジンジャー-ハル・ベリー
テキーラ-チャニング・テイタム
シャンパン-ジェフ・ブリッジス
ウィスキー-ペドロ・パスカル
チャーリー・ヘスケス-エドワード・ホルクロフト
本人役-エルトン・ジョン
「あらすじ」
世界的麻薬組織、ゴールデンサークルの攻撃により壊滅したキングスマン。残された二人、エグジーと、メカ担当のマーリンは、世界崩壊の日なる先日のシナリオに沿ってアメリカに飛び、バーボン・ウイスキーの蒸留所を経営するアメリカンな同盟スパイ機関”ステイツマン”と合流する。そこには死んだはずのハリーが現れる!
一方、上品な見た目に反して超サイコなゴールデンサークルのボス、ポピーは、世界中の麻薬使用人を人質にした驚愕の陰謀を始動させていた。果たしてエグジーの前に現れたハリーの秘密とは?そして、一流エージェントに成長したエグジーは、敵の陰謀を阻止することができるのか!?(HPより抜粋)
ステイツマンというバーボンウィスキーを実際作っちゃった!
オールドフォレスター社製”ステイツマン”仕様のトレーラー!!(残念ながら字幕無しですが…)
マシュー監督は、ステイツマンの表向きの商売がウイスキーの製造であることから、映画へのリアリティーを追求し、実在するバーボンの老舗、世界有数のスピリッツ・ワイン会社であるブラウンフォーマン社とパートナーシップを組んだ(ブラウンフォーマン社の社長であるキャンベル・ブラウンも作中カメオ出演で登場!)また、同社長はこのリミテッドエイディション「ステイツマン」は”オールド・フォレスター”の名の下に新たに香り豊かなバーボンが生み出されたと強調し、「このパートナーシップの重要な点は”ステイツマン”が映画の中で実際に役割を果たしていることだ」と語る。
非常に興味深いですね。ステイツマン飲みながら、DVD観たい!!
ちなみにこちらが、今回組んでいたオールドフォレスター社のオールドフォレスター!きっと、エグジーとマリーンが飲み明かしたのも、事あるごとに乾杯したのもこのお酒でしょうね!
お酒に見るイギリス流とアメリカ流の違いが面白い!
さて、本作でもキングスマン勢が「スコッチならいただくよ」ステイツマン勢が「やっぱりウイスキーはバーボンだぜ〜」などと同じウイスキーを手に盛り上がっているシーンが複数回出てくる。ん?スコッチ?バーボン?酒の種類だよ…な多分。ウイスキーの別称がバーボン?という浅はかな知識しか持ってない私は十分に映画を楽しめていなかったのだ!!そもそもバーボンとスコッチとは何か?同じウイスキーである。
スコッチとは、スコッチ・ウイスキーの略称。
出典
スコッチ – Wikipedia
出典
スコッチ・ウイスキー – Wikipedia
バーボン・ウイスキー (英: bourbon whiskey)は、アメリカ合衆国ケンタッキー州を中心に生産されているウイスキー(アメリカン・ウイスキー)の1種。略して「バーボン」とも呼ばれる。
出典
バーボン・ウイスキー – Wikipedia
出典
バーボンの説明
という事です。
スコッチとバーボンの味の違いは、単純に表現すると甘さの感じ方です。
スコッチは酸味やアルコールの刺激の奥に甘さを感じることが多いですが、バーボンは、カラメルのような甘さをダイレクトに味わうことが出来ます。
お酒のブログでは無い為、下記の参照サイト様へ詳細は譲りますがどちらもたまに飲む私としては、バーボンは荒野、スコッチは高層ビルのバーを想起させる味という印象です。
参照サイト様→意外と知らないスコッチとバーボンの違い。
さて、お勉強もほどほどに私が言いたいのは、スコッチもバーボンもいずれも国を背負う国民的なお酒であり、英、米双方にとって誇りだという事です。ドイツのビール、韓国のマッコリ、日本の「sake」お酒とは常に各国の誇りでありえます。
そしてその酒に対する接し方は、お国柄があり、それぞれのキャラクターを構成してます。
本作において、大事にしていた点にこの”酒への接し方”があります。前作でも”正しいマティーニの作り方”が紳士において大切な事だと説いていたように、イギリス(キングスマン)側にとって、お酒とは嗜みの一種であると捉えているのに対して、アメリカ(ステイツマン)側ではバーボンでのし上がったアメリカンパワーの一つの象徴であり、プルーフ(証明)という度数表記の説明に代表される火や着火を想起させる演出からなる、とてもパワフルで野生的な印象を与える。
ここら辺がヴォーン監督が思い描く”お国柄”であり”キャラクターの枠組み”の一つなのではないか?と勝手に思っている。とにかくお酒がよく出てくるシリーズの為、酒に対する各キャラクターの接し方は見比べて観ても面白いのではないかと思う。
ちなみにキングスマン1と本作で英米真逆の内容で共通している酒が絡むシーンが一箇所ある。このキングスマンシリーズがまだまだ続く事を示唆するような対比だと思う。ぜひ見比べて観て欲しい。
偉大な名画から観る誇大アメリカ人像というネタがふんだん
まずはウィスキーが愛用する鞭だ。こんなのはもう初級編だ。単純にアメリカ西部では牛追い鞭を使うのを引っ張って来ただけかもしれないが、そんなわけない。映画を愛する監督の映画作品なのだからこれは誰がどう言おうとインディアナ・ジョーンズのオマージュである。
さて、続いてステイツマンのリーダー”シャンパン”がたん壷に唾を吐き出すシーンがある。
そもそもたん壺ってなんだよ?なんで存在しているんだよ?とお思いの方もいると思う。
出典
痰壺 – 大辞林第三版
読んで字の如くである。西部劇で頻繁に登場するのは、噛みたばこの唾を入れる為に各ウエスタンなバーの玄関やら椅子下にさりげなく置かれているのを目にする。(大体喧嘩になって割れる)ちなみに噛みタバコも読んで字の如くのものである。
本作のシャンパンもいつも口に何かを入れている(これは、アル中時代の名残とパンフキャラ紹介には記載してあるが、西部劇の噛みタバコをイメージしたのは間違いない)じゃあどの西武劇だよ?と言われると相当数の西武劇が存在するのでこれと断言はできないが、これかもとは言える作品が一つだけある。下の項にてこちらは語りたい。
陽気で情け深いステイツマンことウイスキーのモデルはバート・レイノルズ
上がウィスキー、下がバートレイノルズ
これは監督自身がインタビューで語っている事である。という事は、間違いなく意識した作品の一つは「さすらいのガンマン」だ。バート・レイノルズ主演の初めの主演ヒット作である(この頃は若すぎて全然ウイスキー役ペドロ・パスカルとは似ても似つかない)。パンフのペドロ・パスカルに対するインタビューの中では、「ロンゲストヤード」「トランザム7000」「グレートスタントマン」等の作品名が上がっている。「クールで危険な香りがする男」というのが、マシュー監督とペドロがバートから拾ったウイスキー像らしいが、個人的には人の良さそうな綺麗な瞳と陽気でダンディな口髭が印象的である。
ステイツマンを一番背負ったキャラクターだったので、アメリカ人自体としての大仰さや傲慢さ、パワフルさに加えクールさと表裏一体の情け深さや陽気さ、そういった背景、表裏両面をそれぞれ醸し出す芳醇なキャラクターだった。
真のキングスマンことハリー・ハート/ガラハットのモデルはデヴィット・ニーヴン
上が旧ガラハットことハリー・ハート。下がデヴィット・ニーヴン。
こちらも散々インタビューで監督がお話していた。当初マシュー・ヴォーンによる007を撮ろうとして出来た作品がキングスマンであり、それゆえに007の原作者イアン・フレミングがボンドを生み出すにあたり意識した男デヴィット・ニーヴンをモデルに出来たキャラクターこそがキングスマンの要、ハリー・ハートなのだ。
お互いに”品格に満ちた知的さと、ユーモアのある佇まい”という印象を持った役者としてニーヴンとコリン・ファースは共通項を持っている。007といえば初代ショーン・コネリーのワイルドな印象が私には強いが、前作1ではワイルドさは、ほとんど鳴りを潜めている。(悪役サミュエル・L・ジャクソンが担っていた)上品さからスパイにアプローチしたのだろう事が分かる。
上品さとは、紳士とは何か?に焦点を当てたのが前作の最大のポイントだと個人的には思っているが、その成功例こそがデヴィット・ニーヴンだったのだろう。「八十日間世界一周」などはニーヴン出演の良い作品です。「旅路」はお話は平凡ですが、役者達ヤベー!作品です。アカデミー主演男優賞は伊達じゃありません。ぜひチェックしてみて下さい。
ウイスキー、ガラハット共に実在の俳優をモデルにする辺りに本作が持つリアリティやキャラクターとしての実像があるのかなあと思います。
また本作では特に、実にハリーらしいユーモラスな面をいくつも見せてくれる。
前作は育て役としてある程度、厳格な父のような立ち位置でなくてはいけなかったのが、エグジーもいっぱしのスパイ紳士になった為今まで見せられなかった部分を見せる事が出来たのも、映画としてだけでなくエグジーの成長と二人の関係性を感じられる良い話である。
悪のアジト、ポピーランドに溢れる50年代アメリカの圧倒的再現力
上2枚がキングスマンのポピーランド1,2下が、50年代のアメリカンダイナー、
「グリース」や「アメリカングラフィティ」の世界観を持ち込んだそうです。もう完コピもいいところですね。そう言えばベイビードライバーでも同じくダイナーが重要な役割を担ってましたが、みんな古き良きアメリカに帰りたいんですね。
そしてポピーランドには、ボーリング場やショーステージ、美容院、ドーナツハウスなどが並んでいる。監督曰く「カンボジアに突如出現する50年代アメリカとディズニーランドを組みわせた夢の国」がポピーランドとの事。
ここからはネタバレになるので言えませんが、ショーステージが一番の見どころでしょうね。お前何やってんだよ!!ってなる事請負です。
まとめ
それぞれのスパイにきちんと実在の俳優モデルがいる事や、国々が持つ誇りや一種の偏見、大事な小物に至るまでリアルとリンクさせてるところにただのドンパチ映画にとどまらせない映画としての奥行きや職人芸を感じる作品です。
悪役の動機だったり、飽きさせない展開や構成だったり、もちろん一番の持ち味のスピーディーでド派手かつ変幻自在なアクションだったりと魅力は山ほどあるけれど個人的には作品としてのリアリティに焦点を当ててみました。リアルに置き換えても感じるところが実はとても多い。そして何より溢れるスパイ愛、過去の名作への愛ですね。斬新ながらも過去から連なっているのをきちんと感じさせてくれる作品は決まって良い作品なんですよね。