”地域とつながる若者”の居場所をつくる。長野県地域振興インタビュー

上川ゆかりさん

長野県小谷村出身で、現在は松本市にお住まいの上川ゆかりさんに「地域とつながる若者、学生」について色々とお話をお聞きました。

※本記事は松本大学ではなく、上川ゆかりさん個人へのインタビュー記事となります。ご意見、ご指摘に関しては本ブログ問い合わせまでお願い致します。

<上川ゆかりさんプロフィール>

現在、松本大学の地域振興組織、地域づくり工房「ゆめ」に職員として在籍(3年目)。
また御自身でも個人事業主”35”としてISD個性診断インスタクターとして活躍されております。

ISD個性診断とは
生年月日に隠された性格や能力等を統計学に基づいて分析・検証した分類データから成り立っている診断方法。
「○年○月○日生まれの人は○○な考えが多い」「○○な個性の人が多い」という見方をし、個性を動物に置き換えてイメージ化することで、行動パターンや特性などをより具体化し伝える。(ISD個性診断無料サイトより抜粋)

地域づくり工房ゆめ とは

松本大学の地域学習プログラムの一つ。
教育と学習の融合の場であり、学生が大学で学んだ知識や技術を、地域づくりの中で実践的に生かしていくことを目指している。
2005年に学内に開設された地域づくり考房『ゆめ』では、世代を超えてたくさんの人と出会い、楽しくふれあいながら、学生が教職員・地域の人々とネットワークを組み、ともに力を合わせ、社会に向けて様々な取り組みを実践しています。
地域づくり工房ゆめ公式HP より

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「地域づくり工房ゆめ」は、地域との関わり活動したい学生の居場所

-まずは「地域づくり工房ゆめ」について教えていただけますか?-

「大学時代に地域との関わりを持つことで、卒業後も地域の経済社会活動に参加していける。気軽に地域に遊びにいけるようになるための組織」です。

地域の人々と学生さん達との交流活動の場であり、それぞれがフラットに使えて、居心地良い場所であることを意識しています。

この活動は、ゼミではないので単位が発生しません。
また学校行事、生徒会、部活の活動とも異なった活動組織です。

活動内容は、世代ごとである程度チームを組んで行いますが、その世代や、地域ごとによって異なり多岐に渡ります。
公民館の運営活動やカフェ運営の手伝いから、地場作物の置き売り(畑付近の道隅で農作物も販売する)活動まで幅広いです。
その地域のその年の課題にフォーカスすることもあれば、その年の学生が最も取り組みたい事に焦点を合わせることもあります。

学生さん達がそうした活動を行う原動力は、主にこの組織の存在理念に共感していることと、活動地域を「個人として良い」と思っているからです。

大学で何を学んだかではなく、卒業してからに活きる活動

1、2年生のうちは地域に触れ、見聞を広げる機会に重きをおき、3、4年生では学んだ専門知識と地域とをうまく結びつけるよう活動していきます。
この基本サイクル(それぞれの学生さん達のペースに合わせて変動しますが)の理由は、卒業してからに一つ焦点を合わせているからです。

こうした体験を学生時代にしておくことで、地域に回帰する機会が生まれます。

なので感覚としては、大学生らしい活動の中に”地域の人と絡む”というチャンネルも用意した。という感じです。

大学生らしさというと、もちろん専門的な学術を修める、研究に費やすというのが模範解答ですが、方や、仲間と海へドライブに出かけてみたり、部室でなにするでもなくたむろしてみたり、というのも”らしさ”だと思います。
そういった”大学生らしさ”の中に「地域との関わり」が加わることで、学生同士だけの交流とはまた違う刺激や体験になリます。

学生自身が挑戦する場であって、必要に迫られてやる場所ではありません。
だから単位がなく、ある意味で継続性があります。

母校愛から職員に。

-なぜ川上さんは「地域づくり工房ゆめ」の職員になったんですか?

私は、愛校心がとても強いんです。

それは、一番好き勝手やらせてもらったのが、大学生時代だと思っているからです。
オープンキャンパスの手伝いや学友会、サークル活動等、教員の皆さんにもよくしてもらい、育ててもらったお返しがしたいと心の何処かで思っていたんです。
松大というと学歴差別があるという話を聞いたことがあるけれど、私は、松大が好きだから人にもすぐ母校の話をします。

実は私は、地域や実家にそこまで強い愛着は持っていないんです。
けれど、大学生はみんな広い意味で私の後輩だと思っています。
彼らが興味のあること、悩んでいることは聞いて力にあってあげたいんです。

何よりも目まぐるしく成長していく学生と関わるのは面白い

限られた期限の中で、社会人とは比較にならない速度で、目まぐるしく変化していく人を横で見ているのはとても新鮮な楽しみです。

地域の方がよく「若者に来て欲しい」と言うのはきっと、そんな変化の刺激が欲しくて言うのかなと思います。
個人的に、期限が切られた中で関わる相手が変わっていく方が関係性が気楽なのもありますが…。

学生は、どんな理由で地域と関わるのか?

-一体どんな理由で学生さん達は地域と関わっているのですか?

今は多様化の時代で決して一括りには出来ませんが、私個人が見てきた中では、大枠3つのタイプに分けられると思います。

1、強い地元愛があり、自分自身の活動を地域に還元したい人。

地元に愛着心もあり、育てられた恩や想いを自分自身の活動で地域に還したい。
と考えている学生さん達がいます。
彼/彼女らは自らが何かをつくりたいわけではなく、地域のための役割の中で、自分にできることを積極的に受ける人が多いです。
愛が大きい分、挫けたときの反動も一番大きかったりします。

2、自己のキャリア形成における一つの実績として地域活動を行う人。

自分自身としての活動成果を残したい。

でも、知らない場所でいきなり何かを成すほどの力も人脈もない。地元ならよく知っているし、知り合いも多いから活動もしやすいといった理由から地域活動に参加します。

成果主義で、熱量もあるためを、成果を上げる学生さんが多い印象です。
その実績を元にキャリア形成していきます。

3、なんとなく面白そうだからという人。

このタイプが最も多いです。
いわゆる”中間層”的なポジションです。

みんな一生懸命活動しますが、動機が”なんとなく”なのでなかなか成果が上げずらい傾向があり、いなくなるのも、失速するのも、やはり最も多いです。

「なんとなくやりたい」は興味がそっちに向いているからで、一生懸命活動するだけの大事なものを心の中に持っているはずですが、”どうしてやっているのか”を見える化出来ない学生さんが多い気がします。

”地域で活躍”まで辿り着かない学生像

地域活性や促進の場に携わりながら、「活躍」とまで言えずに失速していってしまう学生さんを、多く目にします。
その多くは、「どうしてやっているのか」「どうしていきたいのか」が言えない人が多いように思います。

学生さんはプレゼンの準備をものすごく嫌がることとも共通する問題です。

地域活動の中で、プレゼンをする機会が出てきますが、準備が一向進まないというケースが散見されます。
ある程度こちらから声かけや催促をしても結局、ギリギリで完成させた付け焼き刃のものをプレゼンし、挫折の一因になってしまいがちです。

とはいえ明文化も言語化も出来ないと、私も地域の人も協力しようにも出来ません。

学生さんの”想い”をある程度見える化することは、現在課題になっています。

その他にも失速、フェードアウトを防ぐために

・「活躍」といえるような成功体験まで辿りつける場を作る。

・そのために「活躍したい」という強い思いを抱かせるようにする枠組みを作る。

など、課題は山積みです。

「なんとなく面白そう」層が、外に出ていける環境を守るのも大切

これは私個人の意見ですが、「なんとなく」や「面白そう」は成果を出しづらいかもしれませんが、良いと思っています。

大人だと、そういう中間層にいる人は面白い、不思議な人が多いんです。
家々を渡り歩く野良猫というか、一つ所にがっつりいないスタンスが、むしろ羨ましくすら思います。

例えば地域活動でも、色々な集まりに顔を出すけれど、自分から何かをしようというわけでもなく色々なところで一緒に活動している人もいます。
地域への愛があるんだかないんだか、どうも曖昧(あいまい)で心がおもむくままという温度感。

けれど、そういう人が、外に出ていける環境があるのはとても良い土壌なんです。

そういった確たるものを持っていない、言語化しない人が外に出ていけない地域は、きっと息苦しい場所なんだと思います。

みんながみんな目的にコミットするために生きていなくてもいいと思います。
「その活動、なんとなく面白そう」で。

運営側としてはそれがみんなだと、形にならないんで困ってしまうんですが(笑)

地域側にもある”なんとなく”活躍する若者像とのギャップ

「なんとなく」は、学生側だけではなく地域側にも実は存在します。
それが「若者に活躍してほしい」という言葉です。

若者を行事に呼んだり、活動参加を促す自治体は多いです。
ですが、呼んでみたところで、若者に何を期待しているのか分からないことは少なくありません。

いやらしい話ですが、「無償の労働力」としての側面もあるため、「なぜ若者を必要とするのですか?」と地域側に問いかけることもあります。

そうすると「この地域の〇〇といった文化を残したい。残すためには、若者に関わってもらい良さを知ってもらわなければならない」と話してくれる場合もあります。

そうした話を学生側にもキチンと伝えることで、学生と地域の気持ちの共有が生まれ意義のある活動になり、学生側としても張り合いを持って活動に向き合います。

学生参加の地域経済活動は、三方良しを心がけている。

地域活動の中には、もちろん収益が目的上位に上がる活動も少なくありません。
学生さんとしては、アルバイトではなくあくまで「学び」が対価なので、そのギャップは拭えないのですが、最近はだんだん地域活動にも費用、収益を考えるようになりました。

お金の部分だけではありませんが、お金は大切ということを地域側も学生側もお互いにわかっておかないと活動はうまくいきません。
とはいえ、収益がプラスになり過ぎないようにも心がけています。
自分たちだけ稼ぎ過ぎてもそれは必ずしも地域のためにならないからです。

逆に、金銭を発生させることができない活動も存在します。

地域x 大学x 学生
それぞれの目的が、三方良しの関係に向かうようにすることが理想です。

学生達に対して、地域の濃密な交流関係は大切なもの

-上川さんは、地域の濃密なコミュニティから少し距離をおく意味でも松本に出て(いわゆるJターン)いらっしゃいますが、学生さんが地域と関わることに思うところはありますか?

正直生まれ育った場所のしがらみは、ずっと窮屈に感じていました。
初めは、この活動もあえて地域に入って濃い人間関係を形成しようとする意味が分かりませんでした。
でも、仕事も3年経ってみて新しい環境・立場で見ると「大事な部分でもあるな」と思えるようになりました。

対自分のしがらみは今でもちょっとウッとなりますが、周りの人間や、学生さん達に地域との人間関係ができていくと、「学び」という意味でもプラスになっていっているのが見ていて分かるので、よかったなあと思うようになりました。

まとめ

本日は「地域と関わる学生」について色々とお話を聞きました。
”地域で活躍する若者”という言葉はよく聞きますが、その若者の考えや実像を知ることが出来て、とても有意義なお話でした!





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