Vol.1に引き続き、和歌山から引っ越して7年半の山下夫妻にお話をお聞きしていきます。
vol.2(本記事)では、移住相談を受けるのはどうしてなのか?
また、fecebookページなど活動の幅を広げているが、今後はどんなことを考えているのか?などをお聞きしてます。
ゲンヤ
インタビュワーは変わらず私ゲンヤがお送りいたします。
(vol1は下記から!)
目次
【移住相談について】「これはライフワークかもしれない」
ゲンヤ
美鈴さんは、移住相談をどういった経緯で始めたんですか?
きっかけはナガブロの「長野移住計画」というブログです。
美鈴さん
始まりは、自分が移住するための情報収集が目的だったが、移住後何気ない日々の安曇野暮らしを投稿しているうちに、「移住を考えている」人たちからコメントや相談が来るようになった。と語る美鈴さん。
移住を計画中はブログを通じて長野県のみなさんに色々と教えてもらった。「私でも移住したい人の役に立てるなら!」と思い、相談にも答え続けました。
そうこうしているうちに、行政から移住セミナーでの体験発表の声がかかったり、TVやネットマガジンなどの取材依頼も来るようになったんです。
美鈴さん
移住したい人が住まいを決めるときに
「この辺りのアパートを借りたいと思うんだけど」
「この中古住宅を購入しようと思うんだけど」
「この土地を購入しようと思うんだけど」
といった相談を受け、必要であれば一緒に現地に赴いたり
街中をマイカーで案内する。と楽しそうに話す。
つながりができたり喜んでもらえるのが嬉しいし楽しい。
移住したい人がここに来てくれて、楽しく一緒に安曇野の暮らしをおくってくれているのが嬉しいんです。
美鈴さん
軽やかな口調で、美鈴さんは話を続けます。心からこの一連の移住相談を楽しんでいるのが私にも伝わってきました。
あるとき、ふと「これはライフワークかもしれない」と思うようになりました。
美鈴さん
ゲンヤ
とても社会的に意義のある生業だと思います。それらはすべてボランティア活動なんでしょうか?
そう完全ボランティアです。肩書きがあるわけでもない。ビジネスにもしていません。行政からの依頼の場合は少しばかりの謝礼と交通費を支給してくれるので、東京や大阪などへは自己負担なく行けるのが、むしろありがたいです。
美鈴さん
ゲンヤ
長野県全域だと、安曇野のある中信以外にも北信、南信、東信と地方が分かれていて、風土も気候も文化圏も違うので大変ではないですか?
たしかに、長野県は広くて同じ県内でも、地域によって、気候風土、社会性も違うと聞きます。
美鈴さん
だから、と美鈴さんは話を続けます。
中信地方以外への移住相談は、大まかにしか分からない場合、該当地方で同じように相談を受けている人や、それを仕事にしている人を紹介します。
職業や業種への質問に対しても、その地域ごとの意見を聞く。
といったかたちで、職業や地域で役割分担をしているとのことです。
それぞれの職能に助けてもらいながら、移住相談を受けています。
相談に乗ってあげた人も、お役に立ててよかったわ。
相談をした人は、確かな情報を得られてよかったな。
と思ってもらえるような、より良い移住相談コミュニティにしていっています。
美鈴さん
ゲンヤ
なるほど〜。そんな充実したシステムだったんですね。
行政の統計だと移住相談は2012年以降右肩上がりに増えているそうですが、相談としても増えている実感はありますか?

長野県企画振興部調べ
増えてるよ〜。最近は、年代も場所も異なった色々な人がきます。今はネット社会だから、fecebookやメッセンジャー、ブログを通じて全国から相談があります。
美鈴さん
和希さん
こないだ、沖縄からあったな。
九州からも。
美鈴さん
ゲンヤ
え〜!本当に全国なんですね!
年代も最初の頃(5年程前)は40代〜50代が中心だったけれど、今は30代前半くらいの若い人も多いです。「家族で引っ越してきて安曇野で子育てしたい。」という相談をよく受けます。また、単身女性も多くなっています。
美鈴さん
ゲンヤ
相談を受けていて、移住する人と、そこまでにいたらない人に違いのようなものはあるんですか?
移住する人は、行動的な人が多いです。何度かのやり取りで、「すぐ行きます」と来て、「じゃあ住みます」と決めてしまう。逆に石橋を叩きすぎて心配事をかえって増やしてしまう人は、移住にいたらないことが多い印象です。
美鈴さん
【信州移住ヨモヤマバナシ】つながりの中で、お互いに助け合えたらと。
ゲンヤ
次はfecebookグループ「信州移住ヨモヤマバナシ」について教えてください。どんなグループなのでしょうか?
「長野県に移住した人、したい人、地元の人」で一緒になって、情報交換するグループです。
つながりをつくって、持ちつ持たれつお互いが助け合っていけたらいいなあと思っています。
美鈴さん
ゲンヤ
きっかけは、長野県主催の楽園信州移住者交流会だとお聞きしました。どんな風に生まれたんですか?
移住者交流会は年4回ほど開かれていて、各地域で行われています。中信地域での会のメンバーがすごくまとまっていて、仲良く色々な話ができたんです。それで、その場以外でもつながろう。とその場でfecebookグループをつくったのが始まりです。
美鈴さん
【信州移住ヨモヤマバナシ】で実際に行われていること、素敵につながった実例などを話してもらいました。
【こんな情報交換が行われています】
・知らなかった事を知れる。
・それぞれの地域の事を知れる。
・これから移住したい人が情報を求めている時に、それを投稿すると答えをくれる。
・地元の人ならではの観点で答えてくれる。
・お引越ししてきて起業している人は自分を売込む第一波として使ってもらってもいい。
・地元の人が「うちの商品こんなのあるんです〜」と広報としてもいいと思います。
美鈴さん
ゲンヤ
私も入っていますが、ただ情報交換だけじゃなくて、イベントや活動も多い印象があります。お仕事につながるということもあるんですか?
プログラミングのパソコン教室を開いているかたが、投稿したら「うちの子好きそうだからやらせたい」と繋がったこともあります。
完全無農薬野菜を栽培している人がPRしたら、パン屋さんをやっている移住仲間が材料として使ってくれるようになった。ということもありました。
美鈴さん
ゲンヤ
おお!すごい!
他にも「一緒に趣味の農作業をやりましょう!」
「こんなアクティビティをやります!参加者募集!」
「一緒に呑める仲間ができた!」など、活発です。
節度さえ守ってもらえれば使い方は自由です。
美鈴さん
どんどんと出てくる実際にあった使い方例の数々。美鈴さんのお話はつきない。
活発なグループになっている理由の一面に触れた気がしました。
ただ闇雲に参加してもらっても、意味がないので、グループに入ってもらうときには必ず自己紹介を投稿してもらうことにしています。
グループに登録することが趣味のような方にはご遠慮いただいています。
美鈴さん
ゲンヤ
大切なことですね。
安曇野に引っ越してきて寂しい思い、悲しい思いをして欲しくない。
新しい暮らしづくりの一つとして、シェアハウスやコーポラティブハウスもやってみたいと話す和希さん。
和希さん
移住したけどすぐには知り合いが増えるわけではない。そんな不安と寂しさを埋めることができる、小さなコミュニティの中から始める移住後の暮らしがあればいいと思っています。
小さなコミュニティの中に入ると、各々もっと情報交流をしながら安曇野をより深く伝え合えるのではないかと思っています。
ゲンヤ
それは、私も実感あります。単身で私も引っ越してきましたが、一人が怖くて初めはシェアハウスに入居しました。
単身もファミリーも同じです。知り合いがいないところに移住する人が多い中、「ご近所さんはいるけれど、そんなに親しくはないし、誰に頼ればいいんだろう…」と不安を抱く人がいなくなればいいと思います。
美鈴さん
和希さん
そうやな。ほんと、そう思うわ。
安曇野に引っ越して来て不安を感じたり、寂しい思い、悲しい思いをして欲しくないんです。
「信州移住ヨモヤマバナシ」を通じて移住前からこちらに知り合いをつくっておくことで、ポジティブに移住後の暮らしを送ってもらえると思います。
美鈴さん
中にはSNSを使っていない人もいて、そのような人たちとは直接、電話や、メールでつながっているのだ。と美鈴さんは話してくれました。
とにかく「みんなが、楽しく、明るく、前向きに暮らしていけるお手伝い」
それが、信州移住ヨモヤマバナシや移住相談で実際にしていることです。
人間一人では生きていけないから、繋がっていかないと。
美鈴さん
【今後の話】組織力をもち信頼を得たカンパニーを考えています。
ゲンヤ
信州移住ヨモヤマバナシは1年で130人と大所帯メンバーになりましたが、今後のことなど聞かせていただけますか?
和希さん
組織として信頼を得た上で動けるクリエイター的なものを考えています。
移住定住というキーワードで様々な素晴らしい想いやキャリアを持ったメンバーが集まっているので、個々の想いとキャリアを生かしつつ行政からの委託も受けられるようなきちんとした組織です。
こちらの活動と情報を県外に流していくことで喜ばれる事もたくさんある、逆に流れて来た情報がこちらにとってもプラスとなることもおおいにあります。と語る。
和希さん
一緒に活動を始めたい人には積極的に参加をしてもらいたいです。
つきなみな表現ですが、皆が一緒になって進めればいろんな力が発揮でき、発展すると思います。
それに少しでも報酬が伴えば、やりがいもより強く感じられると思う。
と和希さんは真剣な表情で続けました。
ビジネス展開として、しっかりした組織を。
和希さん
fecebookグループの方は、交流を大切にしたソーシャル的なものですが、こちらは職としての色合いを強めたものです。ですから、はじめからやろうという気持ちを一つにしていく必要はあると思っています。
地域のボトムアップを図り、地域の良さを発信していくのが大切と語る和希さん。
和希さん
移住定住をキーワードにした中にも多くの職能があります。
建築とまちづくり、他にも物産品や地産品など。移住促進に特化したものや、その関連で地域に来る人などと一緒に学んでいきながら、カルチャー的な活動を起こせればいいなと思っています。
”誰もが行ってみたくなるようなオフィス”づくり。
和希さん
実は、オフィスをつくろうと思って土地(場所)探しを始めています。
ゲンヤ
もう動き出しているんですね!どんなオフィスなんですか?
和希さん
だれもが活動や情報を集約して発信していける場所です。それは移住者だけに限らず、地元の人もいつでも誰でもふらっと気軽に入って来てもらえる、それぞれが作った農作物やクラフトなんかも持ち寄ってきてもらえるような場所です
色々と思い描きつつ、地味にやっていては成果に繋がらないので看板をあげてPRすることが大切だと思います。と和希さんは次のステージへ向かう話を語ってくれました。
”あたたかく安心した住処”があれば、より自分の力が発揮できる。
その次に、シェアハウスやコーポラティブハウスのようなものが必要になってくるのではないかと語る。
和希さん
同じ想いを持った人たちが暮らせる環境の良い住まい。
“安心して快適に暮らせる住まい“があれば、より自身の能力を発揮し、社会参加も上手くゆくのではないか。
そこに理想のライフスタイルを築き上げることが大切だと感じます。
ゲンヤ
衣食住ならぬ「居・職・住」の確立ですね。
和希さん
そうです。そのために、人が集まって来てくれたら良い。そのための拠点づくり、仲間づくりをしていきたいです。
やるからには、失敗はできない。と和希さんの口調こそなめらかでしたが
その言葉には、アルプスの尾根を一歩一歩たしかに上がっていくような力強さを感じさせました。
「居・職・住」とは…
京都移住計画の代表、田村篤史さんが提唱したもの。人が生きていくために必要な3つの要素「衣食住」にかけた移住に必要な3つの要素のこと。居:居場所(コミュニティ)
職:仕事
住:家、暮らしhttps://kyoto-iju.com/about より
【今後の話2】座談会形式の移住セミナーをやっていきたい。
ゲンヤ
美鈴さん個人としては、今後やりたいことなどあったりしますか?
都市部での移住者相談セミナーを、座談会形式でやってみたいと考えています。みなさんそれぞれ聞きたいことや、知りたいこと、移住に対して思っていることがあれば、その場で聞いて、みんなで話していける場です。
美鈴さん
ゲンヤ
たしかに、既存のセミナーだとどうしても時間や場所の都合上、一方的にお話を聞くことが主体になってしまいがちですね。
それだけでは、十分に納得するに至っていないと感じます。
また、移住計画を進めていく段階でも新たにわからないこと、聞きたいこと、不安などができて来るのが当たり前です。
そのような事案に親身になって応えられる場を作りたいです。
美鈴さん
開催されるセミナーに行きたかったけれど何らかの理由で参加できなかった人から、話を聞きたかった、相談に行きたい、資料が欲しいという問い合わせも来るのだと美鈴さんは語る。そういった人たちへの救済措置ともいえるかもしれません。
私一人ではなく、地元農家さんや移住後に起業した人、自分が生まれ育った信州の地が好きな人など、賛同してくれる方がいれば是非一緒にやりたいです。
美鈴さん
ゲンヤ
それは良いですね!地域側としてもPRの場として活用
できるんですね!
そうです。それに、参加した人はより深く地域を知り、より身近に感じてもらえることで移住後の暮らしをイメージしやすくなると思います。
美鈴さん
ゲンヤ
なるほど〜
それで、いざ移住をした際には「いらっしゃい!ようこそ信州へ!」と迎えてあげられるようにしたいですね。
美鈴さん
移住を考えている方へ一言
ゲンヤ
では最後に、移住を考えている方に一言いただけますか?
行動あるのみ!遅々として進まない時もあるだろうけど、小さなことでも行動を続けて欲しいです。
美鈴さん
和希さん
真剣に考えているなら、とにかく動くことです。
迷ったときにはウチの10年分のブログを見てもらったり、相談に来てください。
自分たちもそうして助けてもらって来たから今があります。
心配事ばかり作ってしまうと動き出せなくなるので、心配事を潰していくための行動をするのが一番!
自分の目で見て確かめることも大事!
自身の意思で動くことが重要だと思います。
まずは移住の目的、自分がそこにいって何がしたいのか?をはっきりとさせることです。
計画中は考えることもたくさんありますが、石橋を叩きすぎて、あえなく断念とならないよう、いつも前向きに!です。
美鈴さん
和希さん
仲間をつくっていくことも大切です。
そうそう。そういう時は相談してくれたり、ヨモヤマバナシを活用してください。
美鈴さん
ゲンヤ
そうですね!信州に移住したい、気になっている人がいたら迷わず、紹介します。
今日は本当にありがとうございました。
和希さん
はい、こちらこそ。
また来てね!
美鈴さん
プラットフォームあり、ネットワークあり、ノウハウあり、気持ちもこもっていて、ビジョンまであって、これ以上安心できる移住相談場所はないと感じさせるお話の数々でした。
【関連サイト】
山下和希さんの建築士事務所アトリエ・アースワーク
webマガジン「おうちの収納」でも取材されております。