※ネタバレしません
こいつはもうぶっちゃけ、賞取っちゃうと思いますよ私。
まだ4巻ですけれど、すっげー中身濃いですもん。
もうレイリ1巻とは別人ですもん。(いやレイリはレイリなんですけど)
寄生獣、夕凪の国、ヒストリエの岩明均先生の原作は伊達じゃないですね。マジで作る作品全部傑作なんじゃないですか!
※ちなみにこの三つは読んだ人誰に聞いても面白いって答えるバケモノ作家です。
その前に、まずはタイトル回収から
そもそも「このマンガがすごい!2018」とは
さらに「マンガ大賞2018」とは
一次選考では、各選考員が「人にぜひ薦めたいと思う作品を5作品」を選出。
二次選考では、一次選考の結果から得票数10位までの作品がノミネートされます。
選考員はその全てを読み、トップ3を選びます。
その結果を集計し、年の一推し『マンガ大賞』は決定されます。-マンガ大賞公式サイトより引用ー
ひとえに賞レースに食い込んで急に注目されたりして欲しい作品にスポットを当てる記事でございます。
基本情報
著者:岩明 均(原作), 室井 大資(漫画)
出版社:秋田書店
連載誌:別冊少年チャンピオン
既刊:四巻(2017.11/22時点)
あらすじ
舞台は長篠の戦いから4年が経過した天正7年の戦国。少女・レイリは落ち武者に襲われているところ今川家の家臣だった岡部丹波守が助け、その後家臣として暮らす。彼女は戦いと死を望んでいた。物語は平山城で雑兵たちが鍛錬する場面から始まる。レイリはひょんなことから、武田の城に引き取られレイリは勝頼の息子、信勝の影武者として仕える事となる。時を同じくして武田勝頼の命により対徳川家康のため高天神城に入場し立て籠り戦う岡部丹波守。レイリは丹波守が危ういと知りある一つの行動に出る。(四巻まで)
武田も岡部も史実実在人物ですので、あらすじがとんでもなく退屈になってしまいましたが、語りたいのはここから先のオススメポイントです!とくご覧あれ!1
濃厚なキャラクター・レイリ
主人公が頭のネジがいい具合に外れちゃってる!一番肝心な事です!
人としての多くの正しさを有していながら、あるポイントでは決定的におかしいキャラクターは強烈に人を惹きつけます。
レイリで言えば「戦死願望」があるという事。
彼女は命の恩人の為に命を賭して戦って、先に逝った家族の元へ帰りたい。のです。
似たような思想といえば草枕の一節でもとても有名な「武士道とは死ぬ事と見つけたり候」だ。レイリはこれを岩明流にデフォルメした姿じゃなかろうか。
忠義(生き様)の果ての死に場所という意味で草枕はいかに生きるかを説いている。レイリもまた拾った命の使い方をどうするかを私達に見せつける作品だ。
なのにレイリは恩人である丹波守以外、自分の命も相手の命も等しく消耗品のように軽く扱ってるあたりがまた面白い。
(ここは少しずつレイリは変わっていくんですけれど)
ユーモラスで殺伐とした少女像レイリ
まあこれは、岩明作品キャラクターの一番の持ち味と言っていいかと思いますが、本作レイリもユーモラスなくせにとんでもなく殺伐としてます。人を切るのに躊躇なし。言葉遣いは気負いなく辛辣。いざ戦い始めたら拳で撲殺もいとわない少女。
漫画じゃあ「戦場で死にたがる幼女」というのは結構クラシックな存在だと思うけど、全然(ああまたこれね)感がないのが、凄い。ここらへんは漫画の方の室井先生が見事に雰囲気を掴んでるからだと思う。
小汚い男に囲まれながら、強かに男勝りに生きる髪型、仕草、顔立ち。
狂気のアドレナリンに満ちた表情はもちろん。
達観したかのような涼しげな目元や口元に無垢な少女の面立ち、瞳。それらを実にうまくかき分けている。
あざといキャラ萌え要素はすこしも入れず、流れの中で思わずこぼす天然なセリフや仕草(一拍置いて萌える的な)っていう自然な可愛らしさにとどめているあたり、本当にバランス感覚が天才的です。
レイリの長所となる能力がお話を動かすが運命は決して覆らない
これ!ここが多分一番レイリの面白いところ!!
本作は史実を元にしています。そして改変もの(信長が死なないとか、家康が死ぬとかそういうの)ではありません(今のところは…)つまり運命は変えられない。武田軍を主軸にした物語なら、戦に敗れ滅亡するのです。
そして武田のその運命の奔流に身を投げ出す少女の物語です。
レイリの二つの長所によってお話はぐんぐんと進んでいきます。
一つは彼女自身とても腕が立つ剣士だという事。そんじょそこらの将軍と比べても強いです。
彼女は持ち前の強さで死地をくぐり抜け、主君である信勝を救い、また高天神にあっても大活躍をします。
一歩間違えれば”萌え+俺TUEEE系”作品にジャンルインしてしまう危うさですが、そんな野暮はありません。
序盤で彼女は土屋惣三に挑み完膚なきまでに負けています。その後、土屋の部下となります。
何にでも勝っちゃう、彼女一人いれば戦国時代終わるんじゃね?みたいな浅いお話じゃないんです。きちんと上には上がいるのを描くのを忘れない。リアルが確かに存在する世界観です
もう一つは、彼女が信勝の影武者だという事。物事の情報が入って気やすく、状況を動かす権力を有している(影武者だから勝手にそんな事したら切腹もんだけど)。ここらへんはもう本当に感心してしまう設定です。信勝の影武者となる事で、彼女は信勝の行動や仕草だけでなく、思想や考え方も真似(学)ぶ事になる。史実では武田勝頼も信勝もいなかった場所にレイリが現れる事で、「もしも天才信勝がこの戦場にいたら戦局はどう変わっていたか?」というメタSFでもあるんです。
これから、もっともっとこの設定からお話が面白く転がっていくだろうなあと思います。
そんな状況を打破できそうな要素を備えつつも、運命を覆せない。大きなうねりも止められないし、誰かの不慮の死を止める事もできない。そんな切なさや苦悩をきちんと描いてくれているのが本当に素晴らしい。
故にこの作品は絶対今年のスゴイ!にも、マンガ大賞にもノミネートされるだろうと思うんです。
運命に抗う人間の逞しさ、強さ、虚しさ、愚かさが見事に描かれているんです!
まとめ
戦国ものですが知略奸計の化かし合いもそこそこ、メインは少女の姿で武士達がいかに生きるかを描いている作品です。
もちろん、脇にも隙がなく魅力な脇役達も数多く出てきます!
信勝も惣三も岡部丹波守も勝頼も皆、戦国の世を一人の人間として生きている姿が描かれていて群像戦国ドラマとしても読み応えバッチリです!
1−2は結構暗いけど、3巻から4巻にかけてがずっといろんな要素がぎゅっと詰まってて面白いです!
こちらで一話試し読みできます。
<ソクヨミ>
室井大資 他 作品
室井大資 が沢田新の名義で原作を書いてる
「岩明均 他 作品」
こちらはマケドニア時代を描いた作品。現在も連載中(出るのめちゃ遅いけど)
言わずもがな、傑作。絶対に面白い漫画◯◯選には必ず入る作品。
同じ女性が主人公という事で!初期の名作。