映画たまこラブストーリー大好き感想・考察「あくまで日常描写で描く感情変化の愛おしさよ」

※ネタバレ致します。詳細あらすじは省略してます。

たまこラブストーリー公開ポスター

告白した幼馴染。受けた女の子が相手を意識し関係が変わっていくという最高にべたな学生青春恋愛譚。
もうね私これ大好きなんです。映画館で見てもう一生山田尚子監督についていこうと思いました。
もちろん「聲の形」も好きです。本当に山田監督は感情の揺らぎに対する演出が素晴らしいんですよね。

「3秒あらすじ」
もち蔵(田丸篤志)が高校卒業前に、東京の大学進学を機に幼馴染のたまこ(洲崎綾)に告白をし、たまこがその返事をする。

たったこれだけのエピソードに実に一時間半丸々かけた辺りに京都アニメーションの潔さを感じる本作。
本作は、TVシリーズ「たまこまーけっと」の劇場版だが、本作のみで観賞できる独立した劇場アニメ作品だ。

本作はとにかくシンプルを貫き余計なエピソードを極力剥いでいる。
その為、表現したい事が本当に分りやすい!!
その上でディティールの細かさ、丁寧さですよ!

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丁寧に描かれた「変化」が愛しい


思えば山田尚子監督は、けいおん!時代からとにかくこの変化という事に対して見つめ続けて来た人だと思う。
けいおん!では高校一年生から三年生までを描く中で「変わらない」事を描き切った人だ。
本作は逆に「変わる」事を見つめ描き切った作品だ。

京都の高校三年生、たまこの友人達も皆進路を決め、今の環境がなくなってしまう会話が冒頭に入る。
「思い出を作りたい」と告げられてもピンと来ないたまこ。
たまこの日常は、実家を継ぎうさぎ山商店街の中で永遠にあり続けると考えているからだ。
たまこは何も理解していないわけでもないが、どういう事なのかも分かり切っていない。
それを商店街の喫茶店で出てくる苦い珈琲に牛乳をかけようとする事で描いている。
「今日はいつでも昨日とは違う」というマスターの言葉は本作のテーマそのものだろう。

本筋に戻るが、本作の最も特徴的なところとして開始30分程度で告白をすませ、残り1時間ただひたすらにたまこの気持ちの変化ともち蔵との関係の変化を描いているのだ。
たまこが周りの色々なカップルや夫婦に目が行くようになり、代わりにもち蔵の事が見れなくなる。
とてもベーシックな中身だが、普通そういうウダウダ期は話が膠着してしまうのでさらっと返事まで進んでしまうものだが
このうだうだ期にスポットを当てているところがすごい。
決して青春の恋わずらいをダイジェストでは見せないのだ。瞳の揺れ方、ベットへの倒れ方、バトン部での練習する時の顔、仕草など。
丁寧に時間経過を描き、色々な人に相談なんかもしながらたまこが自分の心の中を探り漂う様こそ普遍性のある内容であり皆に見せたかったものなのではないだろうか。

1日しかない”今日”という日常描写が見事


「変わらないと思っていた」とつぶやくたまことは対照的に、何度も同じ場面「体育館、それぞれの自室、教室」を描きながらいずれも同じカットを極力用いないカメラワークで、一日一日の日常というものを実に巧みに描いている。

伏線の入れ方が神がかっている


ちょっとした伏線の入れ方が凄まじく巧みだ。
もち蔵が告白しようと糸電話をたまこの部屋に投げたら、偶然シャーペンの芯が全て折れて借りに来た妹しかいなかったり
(告白する決意とシャーペン芯をかけてる)

告白前にみどりに「ずっと見てるだけだね」とふっかけられ
その後たまこ本人には「子供の頃とは違うね」という事を言われるもち蔵。
告白」という一大行事に対しての感情の揺らぎを実に見事に表現している。

そして告白を受けてからのたまこの背景は光と極彩色いり乱れるシーンの美しさ。
告白を受ける事の喜びを画面全体から感じる。

告白を受けたまこがみどりに相談するきっかけは、バトン部の朝練中で「うまく受け取れないの、バトンも、」と入っていく。
ダブルミーイングや対比を実に効果的に用いている為、思わずニヤリとしてしまう。

たまこがやっともち蔵への自分の気持ちに気づく過去エピソードも、ポッと出しじゃなくて一旦そのエピソード後たまこが無類の餅好きになった。という事をきっちり効かせてから、恋の引き金にしてるのがすごい。本当に自然な心の動きを熟知しているとしか思えん!

さらにトップとラストシーンでシンクロさせる糸電話。
いろいろキャッチする役割を担ったバトン。
父と母の純粋な告白を歌ったテープ(オリジナルスコア)をOPに配して、その後一番美味しい決め球に使う。
それとてきちんと(母のようになりたい)とたまこの台詞と映像で伏線を事前に張っている。
この小道具達の絶妙な配置が本作の格を何段もあげている。

そして絶賛絶技の背景!


もうこれは言わずもがなですが、京都アニメーションの劇場アニメの背景はおそらく日本一です。
個人的にはスタジオジブリよりも凄いと思っています。
完全なトレースを超えて、匂いや季節感、街の持つ雰囲気までもを感じさせる質感や書き込みにはもう感動の職人芸としか言いようがないっス!!

まとめ


これだけ展開が平凡な話の何がこれほど面白いのか?といえば、正直とにかく技巧的だったところなんじゃないかなあと思う。
安易な台詞はひとつだってないし、盛り上がりどころまでは幾重にも伏線を張って色々な意味合いになるようになっている。
それに隠し味のビターテイストとしてみどりちゃんの失恋がある。一言もその事を語らず、明らかな演出もしないがそうと分かる。
ここもまた技巧派ですね。
前髪で目線が隠れた横顔がつぶやく「あーあ」とか、大福を一口で頬張って苦しそうに笑うなど。
そういうね、演出が随所にあるんですよ。ディティールたまらん!
あとハッピーエンドからのラストタイトルバックな!もうラストタイトルバック大好き!

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