※一部ネタバレ致します。
密かに伝説のアニメと語り伝えられていた事は知っていた。
かなりハードルは自分でも高く設定していたと思う。
が、そんなハードルはゆうゆうと超えるいい映画だった。
舞台、背景、キャラクター、構成、デジタルエフェクト
どれも王道のように見せかけてフックの効いた設定が素晴らしい。
ドラゴンに定期的に襲撃されるバイキングの村に住むひ弱で心優しく発明好きな子ども(頭領の息子)ヒックと
ドラゴンの中でも最速最強にして唯一無二、誰もその姿を見た事のない伝説のドラゴン、トゥース(ヒックに翼を折られた)
二人の友情バディムービー。
実は生物サイエンスファンタジー
まず、舞台がバイキングの村というのが実にいい。
ひ弱な村民なら引っ越しを考えるが野蛮にして勇猛果敢なバイキングの村を襲う怪物に引き下がる訳がない。
「根絶やしにしてやる、ドラゴンめ」とこう来るとドラゴンは宿敵にして天敵だ。「見つけたら殺す」べきもの。
こうした背景の中で、ヒックはトゥースを助け怪我を癒そうと世話し始める。
トゥースとヒックのやり取りを生物化学的な見地、つまり「動物と人間のやり取り」という枠から決して出さなかったのがまた素晴らしい。
本作はファンタジーながら、実にリアルでドライな生物ファンタジーなのだ。
ドラゴンは話したりもせず、高次な知恵も持ってはいない。
あくまで習性があるだけだ。
餌を分けてくれる生物に対して早い順応性を見せるドラゴンの習性が、ヒックとトゥースだけの中にある。
偏見とは、常識とは、何なのかを鮮やかに描いている
ヒック以外の他の村人とドラゴンの間には闘いと死しかない。
トゥースを助ける為にそれ以外にも多くの習性について、次々に発見していくヒックと、
ただ殺し方だけを学んでいく学友達との比較が実に面白い。
いつしかヒックはドラゴンの習性を理解し周りから「ドラゴンマスター」と讃えられる。
なんと皮肉に満ちたサクセスストーリーだろうか。
翼が折れたトゥースにとって、人工の翼を操れるヒックを背中に乗せている時だけが
羽ばたく事が出来るという明確にヒックの存在感を示しているのも鮮やかな設定だ。
では、ヒックにとってトゥースの存在の意味は?必要としている理由は?
トゥースにとって、ヒックとはただの翼替わりなのか
これだけ鮮やかな設定の数々を配置しておきながら、そこは明確には示さないところが何より本作のニクいところなのだ。
見せる部分、見せない部分を実によく理解している職人芸だ。
トゥースとヒックの二人の飛行訓練のデジタルエフェクトの美しさも迫力、
美麗共に素晴らしいレベルで本当に万歳な映画だと思いました!