ダンジョン飯 感想 1巻〜5巻「ダンジョンで理科とお料理するギャグ漫画」

※少しネタバレします(核心には触れません)

ダンジョン飯5巻表紙

ちょうど8/10に最新刊(5巻)が出たので、これを期に一筆認めておきます。
私的・新刊発売日に速買いするおすすめ漫画20選2017に入ってる1冊です。
作者の九井諒子さんは2011年発表の短編集「竜の学校は山の上」が出た時から相当各所で天才と評されプッシュされてた。
そちらも当時読みました!日常世界に溶け込んだファンタジーを読む人に納得させる凄さを持った作品でした。
圧倒されるよりも、異世界が肩に触れる位近い位置に存在する距離感のある作品という感じ。何気ないディティールでのバランス感覚が異常に良いんですね。でもファンタジックなモンスター、竜や天使などのデザインはかなり書き込まれていた印象です。異形であっても生物としての存在(生)をきっちり描きたい人なのでしょう
そこらへんを継承し、進化させて生まれたのが本作「ダンジョン飯」

このマンガがすごい!2016(宝島社)・オトコ編1位
全国書店員が選んだおすすめコミック2016年度・第1位
Amazon ランキング大賞2016 Kindle本コミック 1位(※第3巻)

と書店で見かける名だたる賞を取りまくっています。
前作「ひきだしにテラリウム」では文化庁メディア芸術祭 歴代受賞作品 第17回マンガ部門を獲ってます。
短編3本に連載1本でこれだけヒットするのは、経歴だけとっても、もう完全天才です。

さて背景の説明はここら辺にして、本作がどう凄いのかを語りまくる事にいたしましょう。

「3秒あらすじ」
ダンジョン内冒険中、仲間を竜に食われてしまったパーティーが、その仲間を救う為に再びダンジョンに潜る話。食費がなかった為ダンジョン内の倒したモンスターや原生植物などを食べながら前に進む一行を描いている。

モンスターをどう美味しく食べられるか研究本!!

このジャンルで攻めてきた1巻を読んだ時、完全やられた!と思いましたよ(いや別に私、漫画家でも関係者でもないですけど)、2015年当時とにかく食漫画が興隆し食傷気味だったところに現れたのが本作だったのもあるでしょう。

調べたら、食漫画動向まとめてる人がいた!すげえ
食漫画飽食の時代ー最近の食漫画を集めてみたー最終防衛ライン3 様より
このブログによると増えてるのは、2013年からですけれど(2014年時点で終了作品抜いてる)体感では2008年花ズボあたりからわっーと増え出した印象です。まあそんな世の中ですごく新鮮だったんです。
モンスターの捌き方やら食べ方や保存の仕方なんか詳細に書かれたって、実際食えませんやん!試す事なんて出来ませんもん。
完全想像の産物。もう純度100%のやりたい放題ですよ。
あらゆる食漫画が競合する中、圧倒的な独自路線でひしめき合うレッドオーシャンを高みの見物決め込んでいたわけです。食漫画ブームに乗りながら実は中身はファンタジーなんだ。という鮮やかな裏切り(もちろん良い意味で!)に目をみはりました。

そしてモンスターの捌き方を図解し(きのこ系モンスターは横だと切りづらいけど縦なら刃がスッと入っていく、ケルビー(ユニコーンみたいなあれね!)の各部位肉図解(下記図 参考例)などなど)、食べられるところなどを紹介する愉快さ。

ケルビー部位
栄養分や食味のバランスを考えて他のモンスターとの食べ合わせまで(食人草にスライムの欠片を組み合わせる事で柔らかな食味をプラス!など)ご教授頂けるありがたさ!さらに毎回、六角形の栄養バランスチャートまで表示してくれる完成度の高さ!
知りませんがな(笑)

しかも調理法もサバイバルに適した野趣溢れるものが多いのがまた面白い!
大サソリは丸ごと鍋で(出汁にも活用)すし、宝虫(コインや宝石に擬態した虫)は保存食用ジャムに揚げ物と最短ルートで適した調理法を紹介してるんですね
(最短ルートって私何言ってるんですかね…真面目に描いてると段々こういう生物いるような気がして来るんですよね)

昔からよく名前を知ってて、言われるとすぐにピンとくるモンスターや種族ばかり出てくるのも個人的には良いです!
モンスターの基本説明なしに詳細説明に突入する!RPGやファンタジー脳を持った人間からすると従来の斬新な切り口な訳です(料理マンガだけに)

モンスターやダンジョンを論理的に紐解く理科サバイバル

生物の味を知るという事はその動物の生態を知るという事です。
どういう場所でどのような生活を送っているか?何を食べているのかなどは必須条項ですね。

普通ストーリーというものは、主要キャラクター同士のいさかいや心の葛藤、成長を軸にお話が進んでいくものですが本作においてそれらはほとんどありません。

その分、ダンジョンのしくみ、魔導の仕組み、モンスター達はどの階層でどのように生息し、来る冒険者達を騙し襲ってくるのかを詳細多岐に渡り解説しています。

あくまで描いているのは、ダンジョン内の日常です。土塊に魔導式を書き込んだ核を入れたゴーレムを畑として活用するなんてそのいい例です。

いつも。あるものなら何でも使う理にかなった姿勢なのも本作の魅力です!
生きていく為に必要な知識を身につけるのはサバイバルにおいて最も大切な事ですが、このサバイバル感をファンタジーの中でユーモアたっぷりに描いているのが本作なんです!
「ダンジョンの中で暮らす」とはどういう事なのか?を徹底して考えた作品なんじゃないかなあと思います。
根底にはデビュー作等でも描かれていたファンタジー世界の住人を都合よく生かさない。想像上の生物であってもそこには我々と同じく純然たる生があるという思想があるからこそ生まれた要素なんじゃないかなあと思います。

倫理観ゼロの気の触れたキャラクター達が素晴らしい

妹を竜に食われた男ライオスはモンスター大好き人間で、日頃からモンスターを食べる事に憧れを抱いていた人間(トールマンって種族らしいけど)。まずモンスターを食べようと思うのが倫理観疑うし、水の精霊ウンディーネも人と同じ見かけの人魚も宝に擬態した虫もオールオッケー関係なしに食材と判断するところが凄い。いわゆる何でも食べたいマンなんです!(小学生かよ)

そんな神経なのに動く鎧のモンスターの一部である剣を勝手にパクって自分のものにした上に「ケン助」と名付けるイカれ具合だ。よくギャグで動物のフォルムをした仲間を「お前は非常食だ」と言ってビビらせたりするシーンがあるが、本作ではマジだ。
なんせ、ケン助の目の前で仲間の動く鎧を料理して食べてるんだから!
その時にそっとケン助の視界から食べてるものを見えなくさせる配慮のある仕草がチラッと出てくる、尋常じゃない。

ちなみにそういう葛藤は完全にない!ただ頭がおかしいという事しか私達読者にはわからない。

ライオスだけでしょ?と思うかもしれないが、ダンジョンで自給自足の生活をしているセンシというドワーフもちゃんと頭がおかしい。ダンジョンで自給自足という時点でライオスの同類だが、こっちは料理バカなのだ。
何でも料理したいし、料理にはこだわりたい。初期に目の前で毒にかかって死にそうな仲間に毒消し草を調合する下りがある。
だが昼飯に使いたい、昼飯にはまだ早いと譲らない男!一緒に食べる食材は一晩寝かせた方がうまいと言い出す男!
目の前で満身創痍の人間がいるのに!おそるべし料理へのこだわり、味への執念。

この変態二人をいなす存在としてエルフのマルシルとハーフフッドのチルチャックがいます。

マルシルは完全に良心的ツッコミ(リアクション芸)役ですね、一人だけまともな感覚なので、叫んだりドン引きしたりと忙しい。このリアクションがあるからちゃんとライオス、センシの気の狂いぶりを感じる事ができる非常に大切な役どころですね。
(ああこういう世界なんだで終わらせない理性と生き死に、好奇心とのせめぎ合いは各キャラクターの違いで毎度必ず描いてくれています。案外ここもすごく大切にしているテーマなのかもしれません)

もちろんちゃんと冒険もバトルもする

ここまで読んでくると、学研のおまけマンガ「ダンジョン編」みたいな感じになっちゃいますけど、ダンジョンですからきちんと冒険しますし、少しづつ深層にも潜っていきます。
メイドインアビスのようなロマンは一切描いちゃいませんが、それでもその不思議な場所に人は惹きつけられ謎を解きあかそうとするミステリーアドベンチャー要素があります。
大抵各話1回はバトルもきちんとあります!(ここは冒険ものに必ずあるピンチをどのように打開するか?という場面)レッドドラゴンとは作戦を練って壮絶な戦いを繰り広げますし、狂乱の魔術師っていう悪役?も出てきますし(5巻では魔術勝負もします)し冒険ファンタジーに必要な項目はいつもきちんと入っています。
いつもユニークな倒し方をするのは読んでのお楽しみですね。そしてそのモンスターを食べるまでが1話の基本ストーリーです。

5巻(最新刊)の良いところ!

ここら辺はネタバレしないため細かく話せないんで通常レビューになっちゃいますけど、せっかく昨日出たんだから書いておこう!
①、狂乱の魔術師が出現します!
ダンジョンを作った主、一体何の為に?その片鱗がやっと少し解き明かされます。
②、前巻で全滅したモブキャラ「カブルー隊」がお話に絡んで来ます。
こういうモブキャラに至るまでのキャラ設定が本当に一人一人個性的で、きちんと考えも持っているところも本作の最高なポイントだよなあ。モンスターだけじゃない。出てくるキャラだって人形は一人もいない、ちゃんと活きてる!
③、年長者としてのセンシがカッコよすぎる
個人的には本巻のMVPはセンシだったなあ。若人に飯を食わせようとするセンシの熱意!(笑)若人に生殖を教えようとする誠意!(笑)石化ネタで一番面白い事思いついたのもセンシだったし。ダンジョン飯的な面白さが詰まってましたよセンシさん。

まとめ

モンスターを調理して食べ続ける頭おかしいお料理バカ、食事バカとツッコミの組み合わせをずっと見ていたい。それだけでこの作品はもう素晴らしいギャグ漫画として価値があります。

何だかよくわからないけれどいろんな詳細情報を聞いて賢くなったような一瞬考え直したらただ何も得られない娯楽エンターテイメントでしかないなんちゃって知的マンガ。
やかましい人生訓なんかは一切ないけど、生きる事がどういう事はサバイバルの中でそれとなく語ってくれる作品でもあります。
ファンタジー作品が好きな人ならこれはもう「ダンジョン飯」という新しいジャンルなので、読んでおいて間違いはない作品です。でもどう落とすんだろこのお話…